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人類滅亡を招く恋  作者: AuThor
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命の危険

花瓶が落下した日は、その出来事が起こった瞬間から、総真は時計をその日はほとんど確認しなかったように晴海は思えた。


そして、2人一緒の時以外は、食べ物や飲み物の摂取を控えてほしいということを晴海は総真に強く言われた。


学校でも総真が弁当や飲み物を晴海のぶんも、お昼の時間に持ってくるようになった。

休み時間にのどを潤すときも、総真のクラスに行くという約束をした。


花瓶が落ちた次の日も、総真が腕時計を確認する頻度は少なく晴海は感じた。


晴海は総真との2人暮らしが本当に幸せだったので、いろいろと不可解なことはあるが、そんなことはどうでもいいと思えた。


しかし、花瓶が落下した日から3日が経った日の夕方、公園のベンチで晴海は総真とイチャイチャしていたのだが、総真が腕時計をちらっと見た瞬間、表情が変わったことに晴海は気づいた。


「もしかして、何か悪いことが起こりそう?」

晴海は不安そうに言う。


「うん・・・。起こるかもしれない」


総真はベンチから立ち上がる。


そして、鞄から黒い手袋を取り出し、手に装着する。


「晴海さんはベンチの後ろに隠れてしゃがんでて!!」


晴海は急いで、ベンチの後ろに隠れ、しゃがむ。


総真は辺りをしきりに見回し始める。


晴海はそんな総真をベンチの後ろに隠れて不安そうに見ている。


2人の姿は、はたから見れば、おかしなカップルに見えるだろう。


総真は正面を見据える。


正面には一人の小汚い格好の男が立っていた。


「ああああああ、むしゃくしゃするーーーー!!」

男は叫んだ。


晴海はその男を見て、ぎょっとする。


その男は手に刃物を持っているのだ。


男は意味不明な言葉を叫びながら、刃物を突き立てて、こちらに向かってくる。


「総真くん・・・!!」

晴海は背筋が凍る思いで、総真に声をかける。


「大丈夫だから」

総真は力強く言う。


そして男の突き出した刃物を見事に余裕をもって総真はかわし、鋭い蹴りを男の顔面に直撃させる。


男は地面に倒れ込む。


総真は男の刃物を持っている手を蹴り、刃物が地面に転がる。


倒れている男に総真は近づき、何かを言う。その途端に男はその場から逃げ出していった。


そして総真は地面に落ちている刃物を拾い、排水溝の中に捨てる。


黒い手袋をはずしながら、晴海の方に総真がもどってくる。


「総真くん!大丈夫!?」

晴海は総真に駆け寄る。


「大丈夫だよ」

総真は笑って言う。


「警察に通報しないと」

晴海は携帯を取り出す。


「しなくていいよ。ちゃんと説教しといたし」


晴海は総真が男に何か言ったことを思い出し

「何て言ったの?」と聞いてみる。


「・・・親を泣かせるようなことするなって」


・・・そんなんで改心する?

晴海は内心でそう思った。



晴海は総真と学校に行くために、いつも通り朝の道を歩いていた。


朝から総真は腕時計を頻繁に確認していた。


そして、一緒に歩いていると総真の表情が変わる。


「晴海さん!動かないで!」


晴海は身構え、動きを止める。


総真は黒い手袋を装着し、辺りをしきりに見回し始める。


3日前には大型トラックが突っ込んできた・・・次は何!?

晴海は戦々恐々だ。


朝の登校時間だからか、人も何人か歩道を歩いている。


すると、総真は予測をつけたように、工事現場を見据えた。


晴海たちのいる反対側の歩道沿いに新築のビルを建てるための工事が行われていた。


晴海もその現場を見る。


見ていると違和感を覚えた。次の瞬間、晴海は固まる。


・・・嘘でしょ!?


新築のビルの主要な骨組みになるであろう深く地面に埋め込まれていそうな一番大きく、高くそびえたっていた鉄骨が徐々に晴海たちの方へ傾いて倒れてきたのだ。


作業員は叫び声をあげる。


総真はすぐに晴海を抱きかかえ、場所を移動させ、建物の中に避難させる。


間髪を入れずに総真は反対側の歩道で歩いている人のところへ行くために車道へ飛び出し、走る車を飛び越えたり、よけたりしながら反対側の歩道にたどり着き、鉄骨の下敷きになりそうだった人をぎりぎりのところで移動させる。


直後、地面に鉄骨が倒れ噴煙が舞う。


そして、その助けた人を建物の中に移動させる。


周りの人たちに向かって「建物の中に避難しろ!」と大きな声を総真は出す。


その鉄骨が倒れた余波で、ビルを構成していた他の部品も上空から落ちてくる。


噴煙が舞う中、それらをかわしながら晴海がいる建物の歩道へ行き、晴海の隣にもどる総真。


その総真の姿を見ていて、まるで特撮ヒーローみたいだと晴海は思うのであった。



晴海と総真が2人暮らしを始めて、あと少しで3週間経つことになるが、晴海は悪い出来事が日を挟んで起こるということに気づいてきた。


何も悪いことが起きない日が1日から数日あり、それから何か悪いことが1日起きるというように晴海は感じていた。


そのような悪いことが起きる法則のようなものがあることに晴海は困惑したが、それでも総真が晴海に降りかかる危機を全てカッコよく防いでくれるので、晴海は安心していた。


さらに総真は晴海以外の人にも被害が出ないように最大限努力していることに晴海は気づいていた。

そのおかげで、まだ自分たちの周りで起こった事件や事故での犠牲者は出ていない。


ただ、晴海には不安もあった。


悪いことの規模が徐々に大きくなっているような気がするからだ。


もちろん、毎回確実に規模が大きくなっているわけではない。

規模の大きな悪いことの後に、以前に比べれば規模の小さい悪いことが起きる場合もある。ただ、そのどれも規模に関わらず、総真がいなければ晴海は命を落としてもおかしくない事故や事件だ。

そして規模がランダムのように見えて、確実に大きくなっていると強く晴海が感じたのは今日だ。


なぜなら今日は事故や事件ではなく、災害が起こったのだ。


総真との休日旅行中に晴海たちの場所でとてつもなく大きな地震が起こった。


その状況でも総真は冷静に対処し、晴海は無傷で助かったし、その地震による犠牲者は出なかった。


でも、もし規模が大きくなっているとしたら・・・大地震以上のものが次に起こるとしたら?

晴海はそう考えて、頭を振る。


・・・大丈夫だ。きっと総真が守ってくれる。


これまでも総真はどんなことが起きても、取り乱したりせずに守ってきてくれた。

総真が危機に対して動揺したところなど見たことがない。


明日は法則からすれば何も起こらない日だ。

安心して総真と一緒に楽しく過ごそうと思い、総真のいるベッドにもぐりこむ晴海であった。


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