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人類滅亡を招く恋  作者: AuThor
6/14

バカップル

金曜日の朝、総真が昨日と同じようにマンションの下で晴海を待っている。


晴海は笑顔になり、総真に手を振る。


総真も手を振り返す。


晴海は総真が紙袋を持っていることに気づく。


「その中、何が入ってるの?」

学校へ一緒に行く途中、晴海は総真に聞いてみる。


「秘密」

総真は笑う。


なんだろうと晴海は思いながらも、楽しく総真と話しながら学校へ着く。


昼休みになり、いつも通り2人でお昼ご飯を食べていると総真が話を切り出した。


「晴海さん、明日、テーマパークでデートしない?」


「いいね!デートしよ」

晴海も喜ぶ。


「やった!約束だよ」

総真は笑顔だ。


晴海は、この1週間を振り返り、今まで生きてきた17年よりも濃くて幸せな時間を、たった1週間で、いや最初の告白された日の時点で17年を超えているのではないかと思うほど密度の濃い幸せな時間を過ごしていると思った。


今日の部活には晴海と総真も参加して、部活が終わった後、2人で一緒に帰り、晴海の家の前で総真が紙袋を晴海に渡す。


「これ、中身はTシャツが入ってる。明日のデートにこの服を着てきてね。上着とかは着てきちゃだめだよ。このTシャツ1枚だけを着てきてね。絶対だよ」

総真はそう言い、走り去っていく。


晴海は、総真が以前に服の試着で晴海の服の好みを知りたいと言っていたのを思い出した。


家に帰ってから、総真のことだからきっとおしゃれなTシャツなんだろうなと思い、わくわくしながら晴海は紙袋の中に入っている包装された袋を開けていく。


晴海はその服を見て、目を疑う。


「・・・は!?」


晴海がその服を見た第一声はその言葉だった。


晴海が手に持って目の前にかざしている服は白のTシャツで真ん中にピンク色の大きな模様がある。


その模様はハートを2等分したような形だ。


総真がどのような服を着てくるのか晴海は容易に想像がつく。


晴海の脳裏に最悪のデート光景のイメージが浮かぶ。


「・・・何!?・・・ありえないでしょ・・・」

呆然とした表情で晴海はつぶやく。


・・・私も中学時代、ペアルックの服を彼氏とおそろいで着る妄想はしたけど。

ここまで恥ずかしい服を2人で着る妄想なんてしたことがない・・・。


でも不釣り合いな以上、総真の望みは最大限尊重したい・・・。


晴海は葛藤する。


ベッドにうつぶせで倒れ、頭の上を枕で覆う。

「もう、どうにでもなーれ」

晴海はつぶやいた。


私は明日、恥ずかしさで死ぬかもしれない・・・。



テーマパークデート当日の朝、晴海はデートの準備をしつつ、両親も総真にもらった旅行券などで出かけるらしく、上機嫌で準備をしているのを見る。


晴海は昨日の総真にもらった服を思い出し、総真とのテーマパークデートは楽しみだけど、あの服を着て、マンゴージュースのカップル飲みの比ではない恥ずかしさを1日中味わうことになるのだろうと思うと、私は果たして今日生きて帰れるのか?と思う。


総真がくれた紙袋には同じ柄のTシャツがご丁寧にS、M、Lサイズ全て入っていた。


しかも後で気づいたのだが、あのハートマークの片割れ模様、前だけでなく、後ろにもついていたのだ。

前の人からも、後ろの人からも、バカップルと思われること間違いない。


晴海は家を出る時間になり、覚悟を決めてハートの片割れの模様のついた白いTシャツを着て、外に出た。


道行く人が、時々、晴海のTシャツを見る。そのたびに晴海は恥ずかしい気持ちになった。


総真との待ち合わせ場所に着く前に、どうか総真が違う服を着てますようにと念じながら、晴海は歩く。


そして、晴海は待ち合わせ場所に着いた瞬間、総真の姿が目に入る。


ああ・・・やっぱり・・・。

晴海のかすかな希望は粉々に粉砕される。


予想を裏切らず、総真はハートの片割れの模様のついた白いTシャツを着ていたのだった。


そこから先の総真とのデートは恥ずかしさの波が怒涛で晴海に押し寄せてきた。


晴海は終始赤面しながら、総真と話す。


総真も晴海と同じく赤面しながら話す。


赤面する総真を晴海は見る。

・・・そんなに恥ずかしいなら、何でこんな服選んだ?

内心でつっこむ。


総真はちゃんと2人合わせてTシャツがハートマークになるように常に右側にいる。


道行く人、電車の中でも、散々Tシャツに対する周りの声を聴くことになった。


「ええーーー、何あれ・・・すごいね」


「うそでしょ・・・あんな勇気ないわー」


「見て、後ろにもついてるよ。どんだけラブラブアピールしたいんだよ」


休日のテーマパークは人が多く、さらにそのような声を聴くことになる。


晴海は恥ずかしさのあまり、爆発しそうだった。


しかし途中から晴海は一周回って、そのような声があまり気にならなくなった。


総真と話すと楽しいし、幸せだからだ。


もう、バカップルでいいやと思った。


恥ずかしさと幸せで、わけがわからない状態に晴海はなって、総真とのテーマパークデートを楽しんだ。


テーマパークの中の飲食店で総真は懲りずに、カップル飲みをやろうと提案し、晴海も笑ってのった。

恥ずかしかったけど、もうなんか面白くなってきた。


晴海はその後も、総真とテーマパークデートを楽しんだ。


そしてデートが終わり、晴海は家に帰り、ベッドに倒れ込む。


めちゃくちゃだったけど、楽しかったし、幸せな1日だったと晴海は思った。



テーマパークデートの翌日以降も総真との幸せな日々を晴海は過ごした。


平日の部活にも時々参加したし、その後、夜景を一緒に見に行ったりした。


休日は、晴海と総真は部活に参加せず、いろんなところへ旅行に行った。


総真は時々、晴海が中学時代に妄想したようなバカップルがしそうな恥ずかしいことに晴海を巻き込んでいったが、晴海は幸せだった。

もちろんハートマークのTシャツもテーマパーク以降も何度か着たりして2人で外を遊んだ。


晴海は今年の秋や冬になったら総真とどこに行こうかと、今からまだ早い先の予定を考えると本当に楽しみに思えた。


こんな幸せがこの先ずっと続くなら私はどんなことだってする。

晴海はそう思えた。


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