秘密
総真が未来からタイムスリップしてきたこと、総真があの時の少年であること、それらの事実を晴海は驚くと同時に受け入れる。
今では、そのぐらいのことがなければ、公開告白された日からのありえないような日々の連続は起こりえないだろうと晴海は思った。
「・・・でも、なんでタイムスリップしてきたの?」
晴海は聞く。
「晴海さんに会うために」
総真は晴海を見つめる。
「なんでわざわざ過去の私に会いに来たの?」
「未来には晴海さんがいないから」
総真は遠くを見ながら言う。
「・・・いない?」
意味がわからない晴海。
「俺が教室で公開告白した日の朝、未来では晴海さんは亡くなってるんだ」
「?・・・なくなる?」
晴海は言葉の意味がわからず聞き返す。
「交通事故で即死だったらしい」
その言葉でやっと晴海は自分が未来で死んだということを理解して驚く。
「・・・私、死んだの!?」
晴海は驚く。
「うん。大型トラックが歩道に乗り上げて、それに巻き添えになったみたい」
晴海は思い出す。
総真が公開告白した日の朝、学校へ行く途中にトラックが歩道に乗り上げていた光景を。
「あ・・・え?・・・」
晴海は混乱する。
「でも、なんで今、私は生きてんの?」
「俺がその朝、駅の構内で晴海さんとぶつかって、登校時間をずらしたから」
晴海は朝に駅の階段で男と正面衝突して、電車を1本逃してしまい、遅刻したことを思い出す。
「・・・あ・・・あれ、総真くん!?」
「そうだよ。あれは俺」
「あの時、床に散らばったカードを拾ってくれなければ、力ずくで電車に乗らせないか、一緒に電車に乗って事故直前で回避させようと思ってたんだけど、カードを拾ってくれたから自然な形で回避させることができてよかった」
晴海は男と一緒に駅の階段付近でトランプカードを拾ったことを思い出す。
「え?・・・なんでわざわざそんな方法にしたの?」
「だって、不自然な形で助けたら、公開告白のときに俺だってばれて、インパクトが弱まるかもしれないもん」
「見知らぬ男にいきなり告白される方がインパクトあるでしょ」
「そんな理由で?・・・」
晴海はきょとんとする。
「うん!そんな理由」
総真は笑う。
「そうだ・・・そもそも何で公開告白なんてしたの?」
晴海は今ごろ思い出し、総真に聞いてみる。
「だって、晴海さん、公開告白にあこがれてたみたいだから」
「え?・・・」
晴海は耳を疑う。
「俺、小学校3年生になってから晴海さんに会いに行ったんだ」
「でもその時すでに晴海さんは亡くなっていて、事故から2日経ってた」
総真は小学校1年生の時に、晴海に初恋をした。
しかし、近くに住んでいる人ではないことをその後、周辺を探し回って知ることになる。
旅行中の人だったかもしれないと総真は思い、名前や住所を聞かなかったことを後悔する。
だが、小学校3年生の頃にハッキングという手段を知り、事情を父親に話して、旅館の宿泊名簿や防犯カメラ、市役所の戸籍など、あらゆる方法を使って父親に調べてもらった。
そして、晴海の住所がわかり、会いに行くが、晴海は2日前に死んだということを知り、総真はショックを受ける。
「晴海さんのご両親に川での出来事を話したら、泣いて喜んでたよ」
総真は微笑む。
「晴海さんの形見として、何か遺品を持っていっていいって言われたんだ」
・・・は?
晴海は悪い予感が確信に変わりつつあった。
まさか・・・。
晴海は体が熱くなるのを感じる。
「晴海さんの部屋から1冊のノートを形見としてもらった」
「・・・タイトルは?」
晴海は顔を手で覆う。
「妄想ノート」
総真は言った。
総真のその言葉を聞き、晴海は顔から火が出そうだった。
妄想ノート読まれたーーー!!!
晴海は恥ずかしすぎて死にそうになりながら内心で叫ぶ。
そのノートは晴海が小学生から中学生の時まで、空想の彼氏をイメージしてやりたいことを書き綴ってきたものだ。
晴海の黒歴史そのものである。
晴海は総真と付き合った日に、それを即刻処分した。
こんなものを彼氏に見られたら終わりだと思ったからだ。
その晴海の黒歴史そのものを隣にいるこの男は読んだというのだ。
どうりで、晴海の中学生の頃までの願望と総真の行動が近いように思えたわけだ。
総真は晴海の妄想ノートに書いてあることを実践していたのだ。
形見に妄想ノート渡すなー!!!バカ親ー!!!
晴海は内心で叫ぶ。
「・・・感想は?」
晴海はこれ以上ないほど赤面して顔を手で覆いながら聞く。
「晴海さんってかわいいなーって思いました」
総真は笑って言う。
・・・死にたい。
その言葉を聞き恥ずかしさのあまりそう思う晴海であった。
晴海は恥ずかしすぎて泣きそうになる。
「で、でも、たとえばペアルックの服着てのデートは妄想ノートに書いたけど、あんな恥ずかしすぎるペアルックのハートマークのTシャツなんて、私、妄想ノートに書いたことないし、したいとも思わなかったよ?」
晴海は赤面しながら必死に言う。
「ああ、あれは俺が考えたんです。妄想ノート読んでたら、晴海さんは周りの人からも、羨ましがられたいんだなって思ったんで、できる限りラブラブ感を出そうと」
「・・・・・・」
晴海は何も言えない。
見抜かれているのだ自分の頭の中を。
だから、総真は公開告白に限らず、周りの人から見て、目立つような行動を晴海に対してやっていたのだと晴海はようやく気づく。
「告白するときは緊張したけど、たぶん大丈夫だと思ってたんで、晴海さんが返事をしなかったときは正直焦りました。俺のことタイプじゃないのかなって」
「あ、あれは・・・いきなり、あんなこと、驚きすぎて」
「総真くんのことはタイプだったよ」
「でも、妄想ノートに書いてないようなこと、私が思いつきもしなかったことを総真くんはやってたよ?」
晴海は話をほじくり返す。
「ああ、俺が自分で考えてやったものもありますよ。なんか一緒にやってるうちに恥ずかしいけど楽しくなってきて」
総真は笑いながら言う。
それを聞いて、晴海も笑う。
「私も、恥ずかしかったけど楽しかった」
晴海は笑顔で言う。
それから晴海は総真と話すうちに、いろいろなことを知った。
総真の父親は天才科学者であるということ、その才能は世紀の天才と言っていいレベルだが、本人は有名になりたくなく、人知れず研究していたということ。
タイムスリップの方法も総真の父が考案し、その方法は本人と息子である総真しか知らないこと。小学校1年生の時には総真も教えてもらっていたらしい。
総真の母親は総真が幼いころに病気で亡くなっているということ。
総真は晴海が死んだことを知った日から、父の人脈を使い、訓練を積んできたこと。
高校に入学する直前に総真はタイムスリップしてきたこと。
父親がいろいろな手段を使って、高校に入れるようにしてくれたこと。
部活では、旅券などを顧問や部長などに渡し、自由参加にするように裏から操作していたということ。
タイムスリップしてきたということは総真がこの世界に2人いるのではないかと晴海は聞いたが、総真がタイムスリップしてきたことにより小学2年生の総真は消失したらしい。
でも、小学2年生の自分もその事情を知れば、きっと自分が消失することを受け入れたと自分自身で思うから構わないと総真は言った。




