総真との出会い
「俺はタイムスリップしてきたんだ」
「未来からね」
総真はそう言った。
え?・・・。
晴海は衝撃の走った顔で固まる。
さっきから晴海の全身に衝撃が走りまくり、晴海は総真の言葉にうまく理解がついていかない状態にある。
晴海は混乱していた。
しかし、今まで自分に起こってきた、数々のありえないようなことに納得がいく感じがしていた。
そのくらいのことがないと、自分に起きた数々の奇跡的なことに説明がつかないとも思えてきた。
中学3年生の夏休み、晴海は翔子と旅行した。
旅行といっても、地方で開催されたアイドルのライブに行くついでだった。
アイドルのライブは町おこしが目的のためか、現地に行ってから抽選をおこない、ライブの当選がその場でわかるという、むちゃくちゃなイベントだった。
晴海と翔子はその場で抽選くじを引いた。
結果、翔子は当選した。
晴海は、はずれた。
翔子は大喜びし、昼から夜までぶっ通しのホールにておこなわれるライブに参加することになった。
晴海は悲しかったが、どうしようもなく、昼から一人で田舎のような風景の場所をとぼとぼと歩いていた。
晴海は橋を歩いていたときに下の大きな川を見ると、一人の子供がいることに気づいた。
その子供は懸命に川の中で何かを探しているように晴海には見えた。
同時にその子供の姿を見て、悲しそうな雰囲気を晴海は感じた。
晴海は誰かと遊んでいたり、用事があったりすれば、無視しているところだが、翔子はライブに参加していて、自分は暇であり、特にやりたいこともなかった晴海は橋を渡り、河川敷まで下りた。
河川敷まで下りると、小学校低学年くらいの子供が、やはり川の中を必死で何かを探しているように晴海には見える。
よく見ると、その子供は泥んこだった。
少年か少女か判断がつかないほど、どんな顔かわかりにくいほど、泥んこだった。
まるで泥の中に顔から突っ込んでいったような感じだ。
「何してるの?」
晴海は子供に聞く。
子供は晴海を見て、悲痛な表情を浮かべて言った。
「時計が川の中に落ちちゃって・・・」
声の震えた不安で泣き出しそうな子供の声を聴き、晴海は仕方なく自分も探すことにした。
2人で時計を探し始めて4時間ほど経ち、探している間に晴海は子供が小学1年生の少年であることと、同級生に大切な腕時計を橋から川へ投げられたということを聞いた。
総真はクラスでも端正な顔立ちからモテたので、総真を好きな女の子に惚れていた男子が妬みから、総真を泥の中に突き飛ばして腕時計を盗り、橋へ放り投げたのだ。
橋の下の川は浅く、流れが弱いので、流されてはいないだろうと晴海は思ったが、川が広く、どこらへんに落ちたかも少年は把握してなかったので、時間が経つごとに見つけるのは困難だという考えが強くなってきた。
それと同時に、旅行中に私は何やってんだろうと思えてきた。
夕日が出てきた頃、もう見つからないかもしれないと晴海は思ったので、見つからなかったときの少年にかける言葉を考えながら時計を探していた。
すると、川の中にキラッと光るものが晴海の目に入った。
晴海がよく見ると、それは腕時計だった。
晴海は水の中から腕時計を拾い上げ、少年に伝える。
少年は目を見開き、晴海のもとへ駆け寄る。
そして、それが自分の腕時計であることを確認すると、少年は泣いた。
少年は晴海の腰に抱き着いて、わんわん泣いた。
晴海はお気に入りの服に少年の顔や体の泥がついていることに気づき、離れようと思ったが、少年が安心して大泣きしている姿を見ると
まあいいか
晴海はそう思えた。
「よかったね」と晴海は言い、
少年が離れるまでそのままの状態でいてあげた。
少年が晴海から離れ、「お姉ちゃん、ありがとう」と泣きながら言う。
少年は晴海の服に泥がついていることに気づき、驚く。
晴海は泥を払いながら、「見つかって本当によかったよ」と言う。
少年は晴海の顔を泣きながら見つめる。
晴海は時間を確認するためスマホを見ると、翔子からのメールの受信があり、アイドルのコンサートでサプライズがあり、早いもの順に立ち見が許可されているという内容だった。
晴海はそのメールを見て、急いでホールに行こうと思い、
「じゃあ、私は行くね」
晴海は急いで立ち去ろうとする。
「お姉ちゃん!ありがとう!」
少年の大きな声が後ろから聴こえ、走りながら晴海は振り返り、「うん」と少年に言い、ホールへ向かった。
晴海は何か満たされた気分でホールへと走った。
残念ながら、ホールは立ち見の客がいっぱいで、すでにホールに入ることができず、晴海はコンサートを見ることができなかった。
晴海は少しがっかりしたが、気持ちはなぜか満たされていた。
あんなに人から感謝されたことが晴海にはなかったので、素直にうれしかった。
そんな体験ができたので、抽選がはずれてよかったかもと晴海は少し思っていた。
ライブが終わり、翔子と合流し、晴海の服の汚れに翔子は驚き、どうしたのと聞く。
「人助けをしたんだよ」
晴海は笑いながら言った。




