ご清聴、誠に痛み入る限りだ。
豚嬢の血迷った演説モドキは続く。中身が無いのによくもまぁあそこまで熱弁が出来るものだと感心さえする。
「アンタの様な家畜が何でアタシの上で寝泊まりしているのよ⁉家畜は家畜小屋で寝るのが常識でしょう⁉なんで人間様同様の建物で服を着て人間様より上に居るのよ!?
生意気にも程がある!恥を知りなさい恥を!恥を!!恥を!!!」
言葉が荒くなり、比例する様に床板を強く踏み付ける。そして、言っていることはあまりに破綻している。
いきなりの状況であったが、最早ここまでだ。
「よしたまえ豚嬢。最早君のやっていることは言葉を持つ生物としての品位を疑う行動だ。」
紳士としてそれは許せない……否、紳士ならこの行為を見過ごしてはいけないな。
目の前の豚嬢に皮肉な視線を投げつけるが………………
「あらぁ?あら、あらあらあらアラアラアラアラアラアラアラアラアラぁ⁉アナタ…………そこの縄。一体、何かしらァ?」
そう言って豚嬢は私の後ろを指差す。
そこには先程、私がアクロバットな首吊り回避法を実践した残りの縄が有った。
物証を残すという、致命的なミスをやってしまった!
しかし、今はもっと重要な事を考えるとしよう。
…………何故豚嬢は、私を無視してその事に言及するんだ?というか、私が視界を遮って見えない筈の縄を視認出来たんだ?
「アラ?もしかして豚舎に引っ越す準備?」
「イエ………あの………………」
「当然ね。あなたにはこんな部屋勿体ないわ。
ここは知性と品性の集う場所。何故アナタの様な下劣な豚が居るの?という話よ。
全く、やっと身の程を弁えたのかしら?ハッ家畜の脳はやっと今になって人様の言う事を理解するに到ったという訳ね。全く、汚らわしい豚。」
鼻をフンと鳴らすその様子は正にキミが豚だと言いたい。
成程……………把握してきた。
そういう事か………………
「いえ、それは……………………」
「それとも何?首でも吊ろうとしたのかしら?」
「イエ…………あの………」
「止めて頂戴。人の部屋に豚の死骸を持ち込むなんて………次にここに住む子が可愛そうだわぁ!
それに、アタシの頭上で汚いアンタの死体や汚物を撒き散らすんじゃないわ!
死ぬなら豚に相応しい豚小屋で死になさい!!ここは屠殺場じゃないの!豚が汚すんじゃないわ!
もう豚に用は無いわ。」
バタン!
言いたい事だけ喚き散らし、踵を返して豚は乱暴にドアを閉めて、ドシドシ歩いていった。
君の移動の方がよほど迷惑だと思うのだがなぁ。