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かいてきなたび 2

 「へー、シェリーのお嬢ちゃんはあのアールブルー学園の生徒なんですかい。」

 「へぇぇぇ、シェリーちゃんは凄いお嬢様なのかよぉ……………でも、それなら何で歩きで帰ってくんだぁ?馬車はどうしたぁ?」

 「いいえ、私は……支援して下さった富豪の方と、特待生枠のお陰で、辛うじて勉強をさせて頂いている状態の、風前の灯火の身でして……………お金も物も無い、身分も何も弁えていない、卑しい貧乏人です。馬車なんて見た事は有っても、こんな立派なのには乗った事は有りません。」

 おや、それは初耳だ。馬車は初めてか………。

 「馬鹿を言うんじゃねぇ。」「馬鹿な事を言うなよぉ。」

 私が口を開く前に二人がすぐさま否定をした。

 「富豪の方から支援されたってーのは、そりゃつまり、それだけの価値がシェリーのお嬢ちゃんに有ったって事じゃぁ無いんですかい?」

 「特待生ってのは…そんだけ勉強が出来なきゃなれねえんだろぉ?

 シェリーちゃんはすげぇじゃねぇかよぉ。俺らなんか頭がわりーから、よく解らないけどよぉ、すげぇんだろぉ?」

 男二人とシェリー君は揺れる馬車の中で談笑を繰り広げていた。

 最初は自己紹介から始まった。

 大男は名前をデカンと言い。

 細男は名前をパニンニと言った。

 二人は御者のスカーリ同様に行商人をやっているという話だ。

 確かに、馬車の中には樽や木箱が散乱している。三人+シェリー君の荷物を置くだけのスペースは有るが、かなり手狭ではある。

 「そう言えば……シェリーのお嬢ちゃんは何で何処から来たんですかい?」

 デカン君のそんな質問から始まり、上の会話に繋がっていった。




 この二人は学園の小娘達よりは解っている。

 シェリー君は自分を卑下する。が、富豪からその才を見出され、特待生として、私と出会うまで、陰湿かつ悪辣な虐めや妨害を四方八方から受けながらも、特待生で有り続け、独りで戦い続けた。

 これは素晴らしい事であると私は断言しよう。

 卑下するなぞ、あっては成らないことだ。

 自身を卑下すれば、その自尊心に引っぱられて自分の行動まで卑しくなる………………………当然か。

 あの学園内で下民だ何だと言われ、

 危害を加えられ、

 下手をすれば命を奪われかけ、

 そして味方はどこにもいない、

 最終的に、私が止めなければ、自ら人生を終わらせられる迄に追い詰められていた。

 自信を失うのも道理だろう。



 良いさ。

 失ったものは再び勝ち取れば良い。

 奪われたものは奪い返せば良い。

 命以外は、失えど再度取り戻す事が出来る。

 「有り難う御座います……………あの………その………」

 慣れない称賛を浴びてシェリー君が泣きそうになっている。

 「おぉ……! 泣かないでくだせぇ。」

 「おぃぉい、俺達何か不味い事言っちまったかよぉ?」

 二人がそれに泡を喰ってあたふたし始める。

 「後ろの!何やってんだい⁉……………アンタたち、まさか嬢ちゃんを泣かせちゃいないだろうね!」

 御者の方から怒号に似た声が飛んで来た。

 「いえ………あの……ごめんなさい。だいじょうぶ……………です。」

 涙声でそう言っては逆効果だシェリー君。

 「アンタ達………………何やった⁉⁉⁉」

 声に怒りを載せてぶつける。

 「イエ、あの……なんでもありやせん!」

 「べ……別に何もしてねぇよぉ!」

 嬉し泣きするシェリー君、

 あたふたする大男と細男、

 怒りつつ馬車を操る赤毛の女

 賑やかな馬車はガタンゴトンと、重く、ゆっくり道を進んでいった。

あと少しで10万字!

ギリギリ間に合いそうです…………。


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