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未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書  作者: 黒銘菓
モリアーティー嬢とモリアーティー教授
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開幕~首吊り自殺~

余り好い物では無いので飛ばしたい方はどうぞ。


結末は陰惨には成りません。


 椅子の上に立って、手に持ったものを天井近くのはりに結びつける。

 一端は梁に結びつけられ、もう一端はカウボーイの投げ縄のように輪になっていた。

 その輪に自分の首を通す。

 息を吸って、吐いて、吸って、沈黙。

 次の瞬間、自分の足元を支えていた椅子を勢い良く蹴り飛ばした。

 椅子の背もたれに足がぶつかり、椅子がひっくり返る。

 同時に、文字通り足場を失った体が重力に引かれ、縄が首を強く締め上げる。

 苦しさで意識が遠退く。


 首吊り自殺だった。


 ガタン!!

 椅子のひっくり返る音で目が覚めた。

 何だ?首が、不味い!!

 首に掛かる強い力。足下のおぼつかなさ。何かが倒れた音。何より首を絞めつける帯状の物!!

 分析開始から完了まで、時間にして0.23秒。この状態の意味が解る。

 首吊りだ!!

 本能と知性が突き動かして首の縄に手を掛ける。

 縄を掴んで首に加わる力をを分散させようとするが、時間は無い。

 何故知っているかの理由は解らないが、こうなった人間が如何苦しみ、如何もがき、如何に直ぐ悶え死ぬかを異常に理解していた。

 故に、私がすべき事はたった一つ。速やかに縄をほどき、着地せねばならない!!

 片方の手で縄と首の間に隙間を作り、

 もう片方の手で、縄の結び目。首の後ろを探る。

 結び目を見つけた。しかし………ほどけない!!

 これくらいなら片手だけでも、如何長く見積もっても一秒で解けて然るべき筈の縄が……だ。

 まるで他人の体を使って動作をしているが如く、うまくいかない。


 ギュゥゥ


 首と手、そして全身が生命の限界を主張し始める。

 全身の脈が皮膚の内側で脈打つのが解る。そして、全身の血管がそれだけ活発に動いているにもかかわらず、体の熱が喪われていく。

 このままでは死ぬ。それは確実だった。

 打開方法。時間は少なく、浪費すればするほど肉体のパフォーマンスは低下して生存確率はゼロに迫る。

 このままでは解けはしない、別の、この状況を打開する別の方法を!

 そう考えた途端、酸欠の脳で身に覚えのない知識が現れる。

 人体の基本構造について、物理現象とその特徴について、人間が死ぬメカニズムについて、人の損傷や疾病の軽減・回避・重篤化について、物質の特性とその利用方法について、建築物の基本構造について、人間が作り出す道具の構造や特色について、肉体の効率的な動かし方について……………………………………………………………

 頭の中に文字、映像、音声、匂い、感触、味、様々な形態の大量の情報が頭の奥底から海底火山の様に吹き出し、己さえもその情報量に圧倒されかける。

 絶命寸前、極限状況下。そんな中で情報の渦に呑まれている。と言うのに、自分は異常な程冷静だった。

 圧倒されかけたその情報の渦の中心で、螺旋に腕を伸ばし、自分が今必要としている情報のみを引き出す。

 我ながら異常。死に瀕しながら冷静に対応出来るというのは、実に有用だが、非人間的である。


 まともに話を書いていないのに4人の方がブクマして下さっているというこの状況に戦々恐々としています。

 頑張っていきます。


感想、評価、レビュー、ブクマ、SNSでの宣伝等お待ちしています。

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