かくれんぼ
リバルツ家 大広間にて。
シソーデ=ダイエイトとその妹カヨウ=ダイエイト、そして二人のメイド。
モンテル=ゴードンとそのメイド、カテナ。
その両者が向かい合い、間に立つ者が一人。
「これより、決闘茶会後の最後の見届けを行う。見届けはヤヤーナ=リバルツが行うものとする。」
今回の『決闘茶会』という催しを生み出した男。
下手をすれば政争になりかねない危機的な状況を収めた調停者。
事実はどうあれ、そういう評価を獲得して、今回の件で最も株を上げた出世頭のクソガキ。
それがメイドを側に控えさせ、儀礼用の斬れない剣を持って二人の前に突き出した。
「ヤヤーナ=リバルツはこの剣に誓う。
この決闘が正統だったこと。
この決闘が紳士・淑女的であったこと。
この決闘に不義と不実が無かったこと。
もしこの誓いに背けば、私はこの剣で己が心臓を突こう。」
そう言って片手で剣を高く掲げ、手を胸に当てる。
それに倣う様に、決闘をした両名が懐から儀礼用の懐剣を取り出し同じ様に構える。
「シソーデ=ダイエイト、共に誓おう」
「モンテル=ゴードン、共に誓おう。」
「では、続ける。」
一呼吸置き。
「この度の決闘茶会、勝利したのはモンテル=ゴードンだった。故に、決闘前の約定を果たして貰う。
忠義者のメイド、カテナの名誉の回復のため、モンテル、君は闘った。
勝った暁には、ダイエイト家の人間がカテナ君に対して行った根も葉もない侮辱を取り消して謝罪してもらう。
要求はそれで相違無いか?」
「カテナ、どうする?」
自分はもう自分の目的は果たしたと、メイドの意思を尊重するとばかりにメイドに訊ねる。
それに対して、メイドは上品に笑って答える。
「侮辱を取り消す必要も、謝罪も要りません。何故なら、私は最初から侮辱をされたと思っていませんから。」
「だそうだ。私はカテナの意思を尊重したい。」
見届け人はそれを聞いて表情を少しだけ崩した。
当然、こんなことは聞いてなかったのだ。予定外のことをするなとばかりにクソガキを睨む。
それに対してクソガキはといえば、とても楽しそうに、敢えて余裕ぶって、肩をすくめて笑う。
「仕方ないだろ。本人が望んでいないんだから。
今回は私が早とちりをして、短絡的に大事にしてしまったというだけだ。
すまなかったね、ヤヤーナ=リバルツ君?」
「……コイツ。」
あまりに挑発的な態度に対して口の中で恨みの言葉を噛み潰す。
「待ってほしい。」
そんな二人の態度を他所に。元神童が挙手をした。
「負けた上に情けまでかけられたこちら側の言うべきことではないかもしれないが、我々ダイエイト家はそちらのカテナ嬢に対して貴族として恥ずべき振る舞いをした。
侮辱ではなかったかもしれないが、ゴードン家だけでなくリバルツ家にまで迷惑をかけた。そして、何よりカテナ嬢に心労を与えたこと、正式に謝罪したい。」
「私も、浅慮で恥ずべき言動と行動でした。申し訳ありません。」
貴族が頭を下げる。中々ない光景だ。しかも、頭を下げる相手が貴族ではなく一介の使用人ともなればなおのことだ。
「そんな、頭を上げて下さい。私は気にしておりません。どころか、こうして素敵な衣装を用意して貰える機会を得たのです。得さえした気分ですよ。」
そう言って決闘茶会で着ていたドレス姿でその場で舞って見せる。
「モリアーティー先生……モンテル様の家庭教師をなさっている方に用意して頂いたんです。」
その言葉を聞いて見届け人が見回して首を傾げた。
「そういえば、今日その、家庭教師の先生が来るという話だったのだが、その人は何処に?」
嗚呼残念だ、シェリー君。本当に、本当に残念だと思う。かくれんぼは、そう上手くはいかないよ。
「……先生、どうか出て来てくださいませんか?」
クソガキのその要請に対して、ため息をついて、シェリー君が魔法を解除した。
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