表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1829/1832

お遣いの途中で3

 「ここに来たかったんだよ。

 ありがとうね、ここまで手伝ってくれて。」

 老婆の目的地は町の中心部にある噴水だった。

 「本当に、ここで良いのですか?」

 「人を探しててね。人が沢山居るところの方が、都合が良いのさ。」

 嘘はないと判断した。

 そして、人探しまで手伝いたいと思いつつ、流石に相手も恐縮すると堪え、割り切る。

 「解りました、ではこれにて。ごきげんよう。」

 退くとなったら即撤退。

 そうでないと……

 「ヒヒ、お嬢ちゃん、少し待ちな。」

 「お礼なら不要ですよ。」

 先手を打つ。

 「ヒヒ、謙虚だね。

 心配しないでおくれ。1つ、良い子のアンタに聞きたいことがあるのさ。

 最後に教えとくれ。この老婆を手助けしてくれた良い子の名前は、一体何て言うんだい?」

 身構えていたシェリー君が安堵した。

 「モリアーティー。私は、シェリー=モリアーティーです。

 もしよければ、貴女の名前も教えてくださいませんか?」

 それを聞いた途端、老婆の表情が突然変わった。

 呆気にとられた表情。

 毒気を根こそぎ抜き取られた表情。

 解けなかった難問の模範解答を見て、あまりの簡単さに拍子抜けした表情のそれだ。

 「ヒヒ、ヒヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!イーヒヒヒヒヒヒヒヒ!そいつは良い!すごく良い!まさか、まさかね!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 老婆に似合わぬ声量と高音で壊れたおもちゃのように笑う。

 一通り笑い終え、そして、ピタリと止まる。

 「『レイヴン』。その名で通ってるよ。

 じゃあね、良い子のシェリー=モリアーティー。

 良い子の所には素敵な贈り物がやってくる。

 だから心配は要らない。

 今日は美味しいものを食べてすぐ帰ると良い。

 そして、良い子の元にやって来るプレゼントを楽しみに眠ると良い。」

 真っ黒な目を刮目し、そして…………。

 「……消えた。」

 瞬き一つしていないシェリー君の前から、老婆が消えた。

 近くに遮蔽物は無い。

 『幻燈』の魔法でもない。

 しかし確実に、木箱ごと、老婆が消えた。




 『良い子は報われるべきさ。

 良い子は素敵であるべきさ。

 そして、良い子は皆が羨む姿であるべきさ。

 だから、アタシャは良い子にこれをあげよう。

 それは、良い子が一番素敵になるための手伝いをする、魔法のチケット。

 本当なら一人に二回の艶姿は御法度だけど、今回は特別。良い子とアタシャ、2人から良い子だと思われる良い子なら仕方無い。

 今度困ったら、それに名前を書くと良い。』

 羽ばたく音と共に、声が降る。

 天から風に舞い、漆黒の羽と共に落ちる一枚のチケットが、シェリー君の手元にやって来た。

 「あの方……『レイヴン』さんは、一体何者だったのでしょう?」

 「ハハ、鴉の妖精とでも考えておくと良いさ。

 さぁ、それは大事に持っておくと良い。

 金銀の類いではない。ただ面白い意匠のチケットだ。そう考えれば君の親切と釣り合う。お礼を辞退する理由にならない。そうだろう?」

 手の中のチケットを見て、シェリー君が笑った。

 「とても良い、素敵なお礼です。

 今度出会えたら、お礼を言いませんと。」

 無邪気にその手の中のチケットを見て、笑った。


 「さぁ、それなら今日は楽しく『買い食い』という奴でもしてみるかね?」

 「教授、しかしドレスが……」

 ハッとなって思い出すシェリー君。

 「妖精レイヴンも言っていただろう。『プレゼントを楽しみに眠ると良い。』と。

 妖精の忠告には従うべきだ。」

 「……このチケット、使うことは出来ますかね?」

 「止めておくんだ。それは大事に仕舞っておくと良い。それは宝物、だろう?」

 「……はい。解りました。

 そこまで言うなら、今日は大人しく退散いたします。」

 私の考えを汲んで、懐に鴉羽のチケットを仕舞って、ドレス問題はそこまでとなった。




 そして、ついにリバルツ家に向かう日となった。


 『鴉羽のチケット』がどういった物かは後で詳しく本編で説明しますが、ここで一つ、例題を。

 仮にイタバッサにこれを見せた場合は称賛され、他人に見せないように忠告され、評価が二段階上がる代物です。つまり特級のブツです。


 誤字脱字報告、評価とリアクションを頂き、そして久々にランクインしました。

 ありがとうございます。寒さで少し萎え萎えになっていましたが、お陰様で暖が取れました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ