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お遣いの途中で1

 「さて、速やかに終わらせてしまいましょう。」

 染料と洗剤の匂いが町中に漂っている。

 近くには川が流れ、それが引き込まれて町中に毛細血管の様な支流として張り巡らされている。


 この街ではこう言われている。

 「『信頼出来る店は流れる水が綺麗だ』とね。まったく、強力な魔法の呪文だよ。」

 ここはゴードン領の一画にある小さな町、キシー 。

 その昔、とある服飾狂いの男がいた。

 男は若い頃から他の事には一切目もくれず、ひたすら服を作っていた。

 その服狂い度合いは、あまりにも行き過ぎたせいで勘当されるほどだった。

 着の身着のまま。だが男はその時既に家とは別に服飾の為の秘密基地を作っていたので、喧しい奴が居なくなったとばかりにそこにこもって服を作り、あちこちに出歩いてそれを売って金を稼いで、その金で服を作り、作った服で金を稼いでいた。

 腕が良かったのですっかり噂になり、男の作る服を着たい者と売りたい者と腕比べに来る者と材料を売る者が集まり、そこが町になった。

 全員考え方は違えど、『服』という一点で共通していたのでそれなりに上手くいき、商売としてかなり成功。当時の当主はその実力を認めざるを得なかった。

 男は当主に勘当を取り消されて(・・・・・・・・・)、最終的に『感服』という通り名で呼ばれる職人として大成し、ゴードン家の家系図に無事記されることになった。


 シェリー君は今、単独でそんな場所にお遣いに来ていた。

 本来、クソガキの家庭教師という務め以外は範囲外だが、今日がシェリー君とクソガキの休日であったこと、執事が急用で手が離せず人手が足りないこと、そして目的地が服飾関連だったことが重なり、立候補した。

 「お遣いを終えればあとは自由時間。その間に何とかしてドレスを用意しませんと。」

 「あー、頑張りたまえ。」

 「頑張ります!」

 意気込むシェリー君。表向き応援を口にはしたが、別にそんなことをする必要は無いと思っている。

 ここに来るのを立候補したのはシェリー君だが、お遣いの情報はあの婦人が出所だ。

 つい先日、息子の家庭教師代とばかりに自分の最も価値あるものをシェリー君に差し出そうとしていた。

 シェリー君はそれを受け取らず、持ち前の善性を発揮し、飾って朽ちるのを待つしかなかった婦人の宝物を蘇らせた。そして当然、シェリー君はその対価を受け取っていない。

 わざわざシェリー君をここまで来させたんだ。家庭教師とドレスの代金分の代物を仕込んでいるのは想像に難くない。

 「先ずは、この手紙をお届けしませんと。」

 『身体強化』+『強度強化』

 シェリー君が町中を風の様に駆け抜けていく。

 そんな企みを知らないのは、シェリー君だけだ。


 誤字脱字報告、本当にありがとうございます。

 修正時に見直して少し改訂も出来るので良い機会を頂いています。

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