本日の学び:魔法ではどうにもならないことがある
最近、先生に教わって自分について気付いたことがある。
ボクは何も見えていなかった。
ボクは何も知らなかった。
ボクは無力だ。
先生はボクより魔力が圧倒的に少ないのに自分より速く、早く、的確に魔法や体術を使ってボクを返り討ちにしている。
ボクより少し年上で、経験に大した差なんて無いだろうに、色々なことを知っている。魔法、体術、武器の扱い方、日常に役立つ知識、悪人の考え方まで……。
それだけ知っていて、それを使いこなして、未だ『自分は知らないことが多い』と言っている。
ボクはそんなんだから、反省してる。全然何も解っていなかった。
けれど、流石にこれは解る。
上機嫌だった。
「母上、何かありましたか?」
「……♪どうしたの、そんな畏まったような顔をして?」
「とても、上機嫌だなー……と。」
朝食が好きなものだったのかな?
違う。今日の朝食のサンドイッチにはレタスとトマトが入っている、しかもたっぷり。
単体ならそんなことはないけど、パンがビチャビチャになる気がするからという理由でサンドイッチに挟まってるレタスとトマトはそこまで好きじゃないはずだ。
なのに、今日は大きなイチゴが載ったケーキを前にしたみたいに上機嫌だった。笑ってる。
「モンテルぅ♪」
「はい?」
背筋が伸びた。
何かやっちゃったのかな?なんだろう?もう家庭教師の先生に馬鹿な嫌がらせはしてないし、ここ最近は先生との模擬戦闘の後始末も一緒にやるようにしているから散らかしてないハズ……。
「後でお部屋に来てちょうだい♪
ちょっと見てほしいものと聞きたいことがあるの♪」
「ハイ、ワカリマシタ。」
怒られる方がよっぽどいい。覚悟ができる。
何を考えてるのか全く解らないから、不気味で怖い。
どうしようか?先生を理由にして逃げるか?
「モンテル君。」
背筋がもっと伸びる。多分もう弓みたいに反り返ってる。
「先生、なんですか?」
「今日の授業は少し準備が必要なので、いつもより遅く来てくれて構いません。」
逃げ道を塞がれた。どうしよう?ちょっと怖い。
「安心して下さい。」
意味深に目配せをされたけど、何がだろう?
「モンテル……」
「父上……」
なんだか、物凄く疲れている。疲れているが楽しそうな、諦めと哀れみが混じっている様な……?
「二時間は超えないだろうから、頑張れ。」
何が?
朝食が終わって少しして、部屋の前に立っている。
なんだか、いつもよりその部屋の扉から、変なオーラが出ているような、重苦しい雰囲気が出ている様な……。
『身体強化』
『強度強化』
魔法を習っておいて良かったと思う。いつでも逃げられる。
ノックをした。
「はい♪どうぞ!」
いつもより露骨に上機嫌だった。
扉を開ける。
中から手が伸びてきて。
魔法を習ってもどうにもならないことをこの後学んだ。




