結果は語らず叫びのみ
不条理だ。
非合理的だ。
そう思わないかね?
「あー……シェリー君?」
「なんでしょう?」
耳を貸しながらも視線は目の前に固定されている。
「君は大事なことを忘れてはいないかね?
たとえば……決闘茶会の時に何を着るとか……?」
「ご心配なく、そちらも忘れていません。」
『身体強化』で速度を底上げ、瞬く間に一肯定を仕上げる。
「優先順位というものが、あるのではないかね?」
言っても無駄なのは百も承知。だが立場上、それを言わねばならない。無駄でも。
「あの顔を見て放っておけるほど私は合理的にはなれませんでした。
なので、これが最優先事項です。
勿論、教え子の晴れ舞台に無粋をする気はありませんよ。」
不条理だ。
非合理的だ。
そう思わないかね?
自分の事と考え出すと自尊心の欠片もないしがらみに雁字搦めな有り様なのに、他人を絡めるとこうなる。
糸をほどかれてバラバラになった、ドレスだった布が広がっていた。
「美しい思い出があるならば、共に進んで、更に美しい思い出になって欲しい。
そう思うのは、傲慢でしょうか?」
針と糸がバラバラのそれらを繋ぎ合わせていく。
正確無比で迅速。頭の中でイメージした形をなぞるように、滑らかに手が動く。
「先程失礼ですがサイズは確認させていただきました。デザインは元々のものを想起するように、まったくの別物にならないように、その上で新しさを溶け込ませて最新のものと遜色が無いように。
見せて頂いた装飾と合うものを、思い出を思い出として朽ちさせないように。」
気付いているかね?オドメイドのドレスは、そして振る舞いは、君が作った。
そしてその評価は非常に高いものだった。
君が作れば問題なんて全く無いんだ。他人のために動く時、君は躊躇い無くどこまでも翔ぶ。
それを自分のことだとあれやこれやと考えると止まる。
それはそうだな、言うなれば『呪い』だ。
一言や二言でどうにかなる問題ではないが、死ぬまで闘うべき問題ではない些事。
その一言目は私が既に。二言目からは他者に。
この零の旅路で増やしていこう。
「夜分に失礼いたします。少々よろしいですか?」
「……良いけれど、何かしら?」
ノックの主は、彼女だった。
手には、黒い布に包まれた……服?
「少し、袖を通してほしいものがありまして……都合が悪ければ明日でも構いません。
お気に召さなければ戻すことも出来るので、ご安心ください。」
意味が解らない。
「……それは、どういうこと?」
「開けていただければ。それでは、夜も遅いのでまた明日。」
そう言って頭を下げて彼女は行ってしまった。
見た目もそうだし、『袖を通して』と言っていたから、服で間違いはなさそう。
けれど、戻すことも出来るって……一体。
「お気に召して頂けたようで何よりですね。」
扉の向こう、漏れ聞こえる歓喜を聞いて、そう確信した。




