ガールズトークというにはあまりに歪
冷静な様で冷静ではない奥様。
パニックにパニックを重ねたシェリー君。
見ていて面白いが、これ以上家庭教師の業務が滞るのはよろしくない。
助け舟を出してあげるとしようか。
フッ
最近はシェリー君も相応に成長して私が手を出す必要が無くなっていた。
久々だな、こうしてシェリー君として振舞うのは。
「婦人。一つ、聞きたいことがあります。」
「……何?」
「ここにあるドレスや装飾は、どれもこれも素晴らしいものだと思います。
そして、それ以上にとても大事にされてきたものだと思います。
手入れが行き届いて、シワ一つありませんからね。
それだけ大事にしているものを、どうして私に?」
「…………」
無言になった。それは痛いところを突かれたとか、してはいけない質問をされた時ふの表情ではなく、どう答えれば良いか自分には解らないという表情のそれだった。
ここで退くのもアリだが、敢えて進もう。
「無理にとは言いません。話したくないことなら、話さなくても大丈夫です。」
揺さぶりをかける。
この婦人はシェリー君に対して不信感を抱いていた。距離を置いていた。それが今になって友好的なそれに変わった。
心境の変化……という奴だ。
だからこそ、こちらから今、『誠実』・『不実』の選択肢を渡せば、相手は前者を選ぶ。後者は選べない。
相手の意思で話してくれる。これはシェリー君が積極的に使わない駆け引きだ。
「……そのドレスは、私がショーマスと初めて会った時に着ていたものよ。
ショーマス、その時なんて言ったと思う?
未だに覚えているわ。『素敵な貴女を飾るに相応しいドレスですね。』なんて、あからさまなお世辞を言ったのよ。」
デザインとサイズからして成長期後、結婚前のものだとは思っていたが、初手でとんでもないものを引いたな。
「けれど、それをこうして手入れしているのですよね?
婦人は、当主様をどう思ったのですか?」
顔に赤みが差した。
「私も、お世辞なんて言われた事が無かったから、それを聞いて本気で喜んでしまったのよ。今になって考えれば、バカな娘よね。」
「こうして結ばれているのですから、お世辞ではなかったのではありませんか?
最初はそこから始まったのですよね、なら、次に会った時は?」
「確かなことは覚えていないけれど、茶会やパーティーで会う度に声を掛けてもらっていたわ。」
「お世辞ではなかったみたいですね。その次は?」
「ゴードン家の一人息子ということもあって、ショーマスは引く手数多だったのだけれど、本人がそういった駆け引きが面倒だと言っていてね。
私もあまりそういった場所が好きではなかったのだけれど、ショーマスと話しているときは楽しかったのよ。
だから、お茶会に誘って……」
ドレスと素敵な装飾に囲まれながらの女二人、恋の話。
本質が既婚者と少女として振る舞う無粋な男の会話でなければ、純粋に『素敵』の評価で済んだのだがね。
絵面が、絵面が……いえ、一見すると問題は無いのですがね。実情が。




