かつてない危機に直面した
遅刻申し訳ありません。
と、いうことで。
クソガキは改めて優秀で尊敬に値する家庭教師を得た。
シェリー=モリアーティーにはそれなりに小生意気だがそれなりに耳を傾ける教え子が出来た。
互いに得るものがあった……とは言い難いが、それなりの結果だ。
そうして、数日後。我々は再度リバルツ家へと向かうことになった。
理由は簡単、決闘の後始末を終えるためだ。
そもそもあの決闘はダイエイト家のクソガキとゴードン家のクソガキが小競り合いを始め、どちらに謝らせるかという話が発端だった。
本来の決闘は終了した後、互いに礼をし、軽い食事会を行い、和解の証とするのが通例なのだ。
今回のこれは『決闘茶会』という『奇祭』ならぬ『奇催』な訳だが、そこは本物の決闘準拠ということになっていた。
が、今回はあまりにも両者が命を削る戦いをしすぎたせいで当日の実施は中止となっていた。
残ったそんな謝罪を今回は終えるだけ。
だから当人だけ行くのだろうと思っていたのだが。
「先生、どうか一緒に来てください。」
今までよりは幾分マシな言葉遣いと態度を取れるようになったクソガキが謝罪会見の時のように丁寧なお願いをしてきた。
「え、私、ですか?」
何やら油が差されていないゼンマイ仕掛けの様にぎこちなくなったシェリー君がそこにいた。
「ヤヤーナの奴も、ダイエイトの奴も、ボクの先生がどんな奴か知りたいみたいなんです。」
そりゃそうだ。
あのパパ貴族はシェリー君のことを知っているが、それ以外の連中からしたらぽっと出のクソガキを『神童と名高いガキ相手に正々堂々闘って勝つ』という物語の主人公に仕立て上げた謎の人物になる。
知らなければどんな相手か見ておきたいと思うのは至極当然だ。
「それに……」
「それに?」
非常に言い辛そうに、人目を憚るように口の中で呟いた。
「折角だから、ボクの先生がどんなに凄いかミセタイ……。」
正にクソガキの発想。だが、シェリー君にとってこれは悪くない展開だ。
学園内でのコネクション作りは不可能。実績を作ったところで認められない。
だがこの場なら話は別だ。
妬み嫉みの類が無い状態で、尊敬と実績からシェリー君を知る。ここから先、この実績で名前が知られるというのは悪くない。それが柵になる危険性は有るがね。
「解りました。では、準備を始めましょう。」
淡々とシェリー君はその願いに応えた。
「どうしましょう……かつてない危機です!」
今までもっと壮大な危機があっただろうに。
「着ていく服が、ありません!」
そこかー……。




