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本日二回目の凱旋


 一応、リバルツ家の当主様は諦めるというポーズを取った。

 『学生の身分であれば、卒業後でも構わない。リバルツ家は身分や出自よりも実力重視だ。』

 ポーズを取っていた。

 ゴードン家が特別良いという訳ではないが、あくまで家庭教師は『淑女の零』の名の元に行われている。

 リバルツ家に鞍替えするとなれば申請をせねばならず、そうなれば『ゴードン家で何があったのか?』と突かれる。

 今のシェリー君は薄氷の上に立っている。これ以上隙を見せる訳にもいかない。


 馬車に揺られていた。

 リバルツ家の御当主様より再功労者への労いという奴だ。

 「休むという選択肢は無いのかね?」

 「諦めて下さい。私の辞書に立ち止まるという文字はありません。」

 乱丁本なのですぐさま変えて貰おう。元から無いなら欠陥品だ。改訂版を直ぐに刷ってもらおう。

 馬車の中でレシピを書いていた。

 ぶちまけられた毒入り料理の代わりを作るために現れた、少しお節介焼きで料理好きな執事『エリズ』。

 そのエリズの料理が評判だったということで、お礼代わりのレシピを書いていた。

 「教授。」

 「何かね?」

 「良いものですね。友情や好敵手というものは。」

 「一概には言い切れないが、益があることも多いな。」




 ゴードン家に到着。

 あたりはすっかり暗くなっていた。

 「ありがとうございます。こちらはエリズさんから教わっていたレシピを思い出せるだけ思い出したものです。コックの方にお渡しください。」

 「かしこまりました。確かに。」

 そう言って馬車は言ってしまった。

 「さぁて、どうなるか?」

 「やるだけのことをやったなら、後は結果が出るのを見届けるだけです。」

 「そうだがね。」

 足を踏み入れた。


 「あー、モリアーティー先生、スマンな、全部バラした。」

 屋敷に入ってすぐコックに出会った。そしてこちらを見るや否や、唐突な自白をした。

 「『全部』というと?」

 「夜の特訓を教えてたのは誰だったのかとか、今日来てたとか、その辺全部だ。」

 全部だな。本当に全部自白した。これが本当の共犯者なら今すぐ話した相手を全部吐かせて始末しているところだ。

 「で、今日は夕食がいつもより一時間遅くなるんだが、その前に少し行ってやって欲しい場所があるんだ。坊のカテナお嬢様が呼んでる。」




 向かった先には着替えたクソガキと赤い衣装のままのオドメイドが待ち構えていた。

 「モリアーティー先生!」

 「カテナさん、大丈夫でしたか?」

 「ありがとうございます、先生。先生のお陰でモンテル様は、モンテル様は……」

 黙っていればどこぞのお嬢様と見紛うのだが、恥も外聞もなく泣き出す様は到底ご貴族様ではないな。

 「カテナ、落ち着いて。……話したい、ことがある。」

 クソガキがシェリー君を真っ直ぐ見ていた。

 「構いませんよ。なんでしょう?」

 先生の顔になった。


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