勝って冷静になって
シェリー=モリアーティーとクロージン=リバルツが対談をしている最中。
モンテル=ゴードン、カテナ、スティーブ=レイバックは一人置いてけぼりにして帰路についていた。
当然だ、レイバックはまだしも、二人はシェリー=モリアーティーがあの場にいた事を知らないのだから。
「待たなくて良かったの?」
「何をだ?」
「居たんだろ?アイツ。」
「アイツってのは……あぁ、坊の先生か。そりゃ無い。坊は忘れたのか?今朝の見送りにさえ先生は来なかったんだから。
まだお冠だろうさ。ま、お前さんが一人頑張って決闘に勝ったって知ったら、機嫌も直るかもな。」
「今朝はもう居なかったんじゃない?先に来てたんじゃない?」
「一体どうした坊。急に先生の事をほじくり返して。」
「カテナのその恰好、一人じゃ出来ないだろ。ウチでこんな風に出来るのって、今一人しかいないし。
それに、なんでさっきからこれを珍しそうに見てるんだよ。これはボクがお前から『お下がり』って貰ったものだ。それを初めて見るみたいに、おかしいだろ。」
今回使ったメリケンサック。これは夜中に魔法の練習をしていた時にレイバックから貰ったものだった。
「これ、お下がりじゃないんだ、ピカピカなんだよ。あと、ピッタリなんだよ。ボクとレイバックじゃ手の大きさが全然違うのに。」
「あ、あぁそれか……実は嘘だ。
お下がりを貴族の坊に渡したなんて知れたらことだからな。昔の伝手で作って貰ったのさ。」
「サイズを知らないのに、ピッタリを作れたのか?」
「あ、あぁ、見た感じの大きさでな。坊と俺の長い付き合いだ。解るだろ?」
「ボクのレイバックの長い付き合いだからお前の下手な嘘なんてバレッバレなんだからな?
白状しろよ、この二週間、ずっと俺に闘い方を教えてくれたのは、これをくれたのは、アイツなんだろ?」
最初は、少し変だと思ったくらいだった。
レイバックが強いってことは知ってたけど、詳しくは知らなかった。
だから、教え方が上手いのは強いからだと思ってた。
けど、二週間習って、今日決闘で実際にそれを使って、ハッキリした。
繋がっていた。
それまで教わっていた三つの魔法と、この武器、そして武器の使い方と立ち回りの仕方。
全部綺麗に、闘える様になっていた。
練習中に動きが良くなったら、練習の成果だって言われた。
そう思うと嬉しくなって、練習が楽しくなった。
だから考えてなかった。
「夜、練習している時にレイバックはちっとも闘ってくれなかった。レイバックだったら、闘って練習することだって出来たんだ。」
今考えると違ってた。出来なかったんだ。
暗くて、解らなかった。
あれはレイバックのフリをしていたアイツだったんだ。
特に引き継ぎも無しに連携プレーなぞ出来る訳がない。




