超々変則的エキシビジョンマッチ
『地形操作』
爆風と破片を妨げていた壁を沈める。
煙幕とその向こうで燻る火。様子は見えない。
そこに迷わず毒針を投擲する。
「随分と念入りじゃないか。」
「えぇ、最後、壁を作る前に動揺している様子が無かったので。
それに、熱にあれだけ強いのですから爆発に対して少し強くても不思議ではないでしょう?」
袖から何本も何本も針を煙の中に投げつけていく。
その返礼は3本の短剣だった。
表面に不自然な光沢……毒だな。
『H.T.』
針は短剣に比べて飛距離が短く風で軌道が変わる欠点がある。
だが、針は短剣に比べて視認が容易だ。
短剣が蛇の様にうねる柔布に絡め捕られる。
「見たことのない形状の刃物ですね、手製ですか?」
一瞥と同時に迷いなくそれを上空に放る。
同時にH.T.が傘の形になり、空中で爆ぜて降り注ぐ短剣だったものからシェリー君を守る。
毒ナイフからの爆弾。ナイフが刺されば良し、止められても爆発して毒を帯びた破片が襲い掛かる。随分と良い趣味をした代物だ。
そうこうしている間に煙の中から招かれざる客人がナイフ片手に距離を詰めてくる。
しかも当然の様に無傷で。
『水流操作』
こぶし大の水の塊が飛ぶ。何の変哲も無いそれは相手のフードの内側に張り付いた。
流れ落ちる水が顔にへばり付き続けたらどうなるか?まぁ窒息するな。
しかも、固体と違って液体は掴み取れない。凍らせれば掴めるが気道と肺まで凍り付く、蒸発させれば呼吸器も吹っ飛ぶ。
だが、今回の目的はそこじゃない。
相手のフードの中が水で満たされる。だが相手は動揺せずにそのままこちらにナイフを突き出す……切っ先は明後日の方向に向いているが。
『幻水』
光を屈折して偽の映像を空中に映し出す『幻燈』。それを空中ではなく水中で行うだけの魔法。
だが魔力消費はこちらの方が少なく済む。
「あぁ、矢張りそうですか。」
『身体強化』・『強度強化』
H.T.を大槌に変形。虚空を突いている隙だらけの胴体に一発お見舞いし、吹き飛ばす。
打ち込んだ感触は、肉と骨の塊というには奇妙なものだった。
「異常な頑強さ、水の中だというのに水泡一つ無い奇妙さ、肉と骨の無い身体。
貴方は、何ですか?」
痛覚という痛覚が無く、呼吸が無く、肉体が無い。
はてさて、今度の中身も植物かな?
「ハ、ハハ、アハハハハハハハハハハ!」
高笑いが聞こえた。
未だ顔は水没している……のだがね。
「お優しいな。……ったく、これだからガキ相手は厭なんだよ。」
甲高い女の声が響いた。
吹き飛ばされた身体が起き上がる。目深に被っていたフードを脱ぐと、そこには……
「貴女、それは……」
首から上を水が覆っていた。
何故『頭』や『顔』ではなく『首から上』と表現したのか?
そこにあるのが『頭』や『顔』という定義から外れていたからだ。
肩から首が伸び、その先には何も無かった。
ただ、何もない場所を水が覆っていた。
窒息する訳がない。溺死する訳がない。そこに呼吸のための鼻や吸い込む口が無いのだから。
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