決闘茶会で最も忙しかったシェリー=モリアーティー
最初の茶会は、妙な事が多かった。
先ず、オドメイドに対する言い掛かりだ。
あの場で何故、よりにもよってあのメイドが盗みを働いたと思ったのか?
たとえそれが事実だったとしても、何故自分であそこまで荒っぽく、下手をすれば家の評判を下げるような強引なやり方を取ったのか?
もっと深く細かいところに疑問を持ってみようか。
『何故未熟な審美眼しか持たない華美な小娘がシェリー君の作った精度の高い模倣品をそれと看破できたのか?』
華美な小娘は宝飾品や装飾品に造形の深い家の出だとは聞いた。だが、今回作ったシェリー君の模造品はその程度で見破れる程お粗末なものではなかった。
その見解には主観が混じっている?教え子可愛さに過大評価している?だって?
あぁ、それはもう考えた。確かに、華美な娘の審美眼がシェリー君の技術を上回った可能性はあった。
だから試したんだ。
どこもかしこも見どころのない、本人より首飾りに思わず目が行ってしまうような地味な娘、パルル=タチストンに変装。そして、この前より少しだけ精度の甘い模造品を華美娘に見せた。
一見どころか手で触れたにもかかわらず、華美な娘は看破出来なかった。
シェリー君の技術に瑕疵は無かった。本来は騙せたはずなのだ。
だが、茶会の時はそれを看破していた。
ならば、『看破していた』という認識が間違いなのだ。
茶会の様子を聞いた時、華美娘はこう言っていたそうだ。
『ほら、やっぱり偽物。
メイドがこんなに着飾ってお茶会に来るなんて、おかしいと思ってたのよ。
あるわけないでしょう、そんなこと。』
そのまま受け取れば、『オドメイドの首飾りを見た時にそれが偽物だと思い、確認したところ案の定だった』という風に聞こえるだろう。
だが、華美娘には看破が出来ないことが判明した。なら、これはどういう意味を持つか?
こう考えてみよう。『華美娘が誰かからオドメイドの首飾りが偽物だと吹き込まれた。』と。
『ほら、やっぱりあの人の言った通り偽物だ』と。
誰かさんが茶会に、クソガキにちょっかいを出していると考えれば、合点がいく。
となれば、もう少し警戒すべきだ。
一言唆した程度で貴族の娘をけしかけられるとは限らない。
なら、何かしら判断力を奪う様な細工をした方が確実だ。
そう言えば、茶会から帰って来た時、オドメイドもクソガキも、少々取り乱し過ぎだとは、思わなかったかね?
何故だろう?何かしら盛られたのかね?
その状況では華美娘の審美眼の程は判明していなかったが、気になってオドメイドの着ていた飲み物のシミがついたドレスを調べた。
あぁ、ここまで言えば十分だろう?そこから以前ゴードン家の大馬に使われた赤い粉末状の薬品が検出されたんだよ。
そこで、シェリー君は決闘茶会に向かうことにした。
パルル=タチストンとして華美娘の審美眼のほどを確認するために。
ペフィンガンに怪しい料理を始末させるために。
そして、エリズにはペフィンガンの後始末をさせるために。
そして、家庭教師シェリー=モリアーティーとして不届き者を殲滅するため。
準備万端整えて、百面相を終え、最後の仕上げに来た。
パルル=タチストン:Parl(parr)touchstone=真珠ならざる真珠(偽物)+試金石。つまり、宝石の審美眼を見るための変装。
エリズ:sherryのアナグラム
ペフィンガン:うっかりメモ忘れ。モリアーティー辺りのアナグラムだった様な?
クロージン=リバルツ(閉幕)⇔ショーマス=ゴードン(開幕)
シェリー君の変装用偽名でも考えておきましょうかね?アルセーヌ=ルパンは二種類くらいあるので、その要領で。




