若人達の決闘の結末
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立ち上がる両雄に観客席は沸く。
魔力は枯渇している。
爆風で全身痛まないところはない。
武器も爆風で飛んでいった。
立っているものやっと。
しかし、闘志の火だけは未だ消えていなかった。
ふらふらと立ち上がり、互いに相手の元へと向かう。
息も絶え絶えの中、シソーデ=ダイエイトは息を吸って、問いを投げかける。
「改めて、君の名前を聞きたい。」
答えるのも億劫。そもそもモンテルにはそんなことをする余裕は無かった。
けれど、その目を見て、ふざけているわけではなく、答えるべきだと思った。
「モンテル=ゴードン。」
「ありがとう、モンテル=ゴードン。
俺の名前は、シソーデ=ダイエイトだ。」
「知ってる。」
「一つ聞きたい。何故、一人逃げずに俺を助けた?これは決闘だぞ。」
とても重要なこと。それの答えを知らねばこれより先へは進めない疑問だった。
「……そんな勝ち方しても、意味が無い。カテナが悲しむから。」
これは、モンテルの闘いであり、カテナのための闘いだ。
『貴方はカテナさんを見ていませんでした。貴方が見ていたのはカテナさんではなく、カテナさんの為に怒る自分。貴方は義憤で酔っていただけです。』
その言葉が未だ刺さっている。前の茶会での浅慮の結果、カテナを悲しませた。
もう、悲しませちゃいけない。
「そうか……闘う理由が解った。
だが、俺も妹を悲しませたくない。勝たねばならない。そちらの事情がなんであれ、俺が勝つ。」
「違う。勝つのは、ボクだ!」
精緻な魔法や強力な魔法は無い。
大胆な戦い方も堅実な戦い方も無い。
二人の若人が、立つのもやっとな状況で、互いに歩み寄り、弱々しい拳を振り上げ、相手に振り下ろす。
互いに満身創痍で腑抜けたそれら。しかし、それまでを見ていた人々はそれを決して嗤いはしない。
互いに限界を超えて絞り出し、それでもなお立ち上がり、最後まで自分の信念を突き通そうとするその心意気は、心を打った。
無言で、眠くなるほど鈍間な拳で殴り合う。
当たる拳。相手が倒れそうになる中、自分も足元がおぼつかない。
殴り返す拳。相手が倒れそうになり、自分も反動で引っくり返る寸前。
互いの拳を避けることは出来ない。
互いの拳で相手を倒すことも出来ない。
どちらが先に膝をつくか、それだけのこと。
歓声が最大級に響き渡る。
その中で一際大きな声が聞こえる。
一つは劣等感と愛情入り混じる妹と、忠実なメイド達の声。
もう一つは、自責の念から家庭教師の部屋の扉を叩き、ドレスと貴人の振る舞いを纏ったメイドの声。
その声のためだけに、両雄は最後の一発を相手に喰らわせた。
直撃。
直撃。
互いの反動で、後ろに倒れそうになり……
シソーデは耐えた。
モンテルは吹き飛び、地面に倒れる。
観客の半数が息を呑み、観客の半数が歓声を上げた。
「モンテル様……」
ところで、この決闘のルールを覚えているだろうか?
この決闘には勝利条件が明確に定められている。
『相手を気絶させるか、降参と言わせれば勝利となる。』
気絶させるか、降参と言わせるまで、勝利にはならない。
倒れただだけでは敗北にならない。
「まだ……」
モンテルに降参の意は無い。戦意は失っていない。だが、体力が尽きて立ち上がれない。
「…………」
シソーデに降参の意は無い。立ち上がるならまた倒す気でいた。
だが、もう意識を保つことさえ出来なかった。
崩れ落ちた。
今のが、シソーデの最後の一発だった。
もう、立ち上がることはなかった。
「ヤヤーナ=リバルツはこの決闘茶会を見届けた!
この決闘の勝者は、モンテル=ゴードンだ!」
7:20投稿は、本日はお休みにさせてください。おやすみなさい。




