試作品に乗って屋敷に行こう
深夜、草木も眠る丑三つ時という頃に、コックと家庭教師は屋敷の外に出ていた。
「こんな深夜から町まで出る気か?流石にこの時間に乗り込むのはな……」
手にはジャーキーとスモークしたチーズとゆで卵、それにナッツ、ベーコンにハムまである。
「いいえ、そんなことはいたしません。ちなみに、それで全部、でよろしいですか?」
「あぁ、ケガ人にこれ以上渡すのも迷惑だろうと思ってな。増やした方が良いか?」
コックが持っているものは先述した通り。コックが全て手に持っている。
だが言っていなかったな、ベーコンとハムは塊で用意されていることを。
増やす選択肢がここにあるのかね?これで越冬でもする気かね?
「いいえ、それだけあれば十分だと、思います。」
「おっと、忘れていた。夜食、食うかい?」
懐から使い込まれた切れ味抜群のナイフを取り出し塊にナイフを入れて一枚のベーコンをナイフに刺して手渡す。
「ありがとうございます。」
上質な豚肉の旨味と塩味、それにスモークされた香りが口に広がる。ただただ美味なベーコンだった。
「それで、話を聞く限り誰かが運んでくれるみたいだが、一体誰が?」
「あぁ、それならもう直ぐ来ます。」
その言葉を待っていましたと言わんばかりに道の向こうから静かにやってくる大きな影。
静かに夜闇に半分溶けながら滑り来るそれは……
「馬車……じゃないな。なんだ、これは?」
影が近付き、月光に照らされて正体を見たコックの反応は驚愕とそのセリフだった。
「モラン商会をご利用いただき、ありがとうございますのー。」
「ねぇねぇねぇ、これなんだと思う?ウチの自慢の天才発明家が作った『魔力自動車』って魔道具なんだ。」
小さな箱に車輪を付けたそれに乗っていた二人はシェリー君とコックの前にそれを停め、笑って言った。
「魔力を動力にしてタイヤを動かして走るって代物でのー。動力源を放り込めば何もせんでも走るし、自分の魔力を放り込んで走ることも出来るんだのー。
「ねぇねぇねぇ、これはそこまで大きいもの運べないけど、静かだし本気で走れば馬車よりも速くてクルクルその場で回ることも出来るんだよ。」
「まだ試作機と言ってたが、これでも十分だのー。」
「流石ですね。」
あの自称そこそこ天才は十分商会の役に立っていることが解った。
「……その二人は、知り合いか?」
目を丸くしていたコックが目の前の光景を見てやっと呟いた。
「えぇ、以前少しご縁がありまして、今回の件で少しお願いをしていたんです。」
「重大な危機を助けてもらった恩があってのー、今回はその恩返しってやつだのー。」
「ハハ、凄いな。」
コックは目の前の少女の新たな法外さを知った。
昨日ランキングに載っていました。ありがとうございます。……なにゆえ?
EDのCCCさんは新曲PVを公開。
OPの七海うららさんは新モデル公開。
皆様凄いですな。
 




