誘拐事件は一先ず安心
『磁力操玉』
自称そこそこ天才が商会にあったあり合わせの材料でサッと作った魔道具。
玉は磁力によって浮遊し、高圧電流や質量による打撃で攻撃。時に味方の動きをサポートする汎用魔道具である。
「………………」
敵対する場合、触れれば高圧電流が流れる上に当たると痛い視認性最悪の浮遊ユニットが全方位から飛来し、複数人いる場合は動きもサポートできる極悪なものとなる。
状況は二対一。卑怯と誹ろうが意味は無い。どんな手を使おうが目的を果たした者がこの戦いの勝者なのだから。
「さて、我々の力を」「見せつけようねぇねぇねぇ。」
モラン商会会長、シェリー=モリアーティー。
きっと後詰めの戦力が隠れているだろうと予想した彼女の命でこうしてここにやって来た二人組。
純粋に上司の命令で来た。
だが、それ以上に命の恩人に報うべく動こうとしている彼らのモチベーションは高い。
「モンテル様!」
気付かれないように細心の注意を払いながら……とはいえ『反罪術式』でクソガキの怪我を大まかに創り治した後で、シェリー君はレストランへと戻ってきた。
「ただいま……」
落ち着いた。とはいえ人質解放後未だ30分。
しおらしく大人しくなっている。反抗期はなりを潜めている。
「ご無事ですか?
お怪我は?
酷いことはされませんでしたか?
何か食べたいものは?」
オドオドアワアワ……安堵しているがそれ以上に愉快なまでに動揺している。
「大丈夫。心配かけてごめん。」
「謝らないでください。貴方が無事なら、わたしは、私はそれで…………」
オドメイドが涙を浮かべている。
ちなみに、今のところこのメイドは事の詳細を全く知らない。
知ったらどんな反応をするか。
オドメイド渾身の平手打ちがクソガキの頬を打った。
良い音だ。
「謝ってください。」
淡々と、涙を流した跡をそのままにして、そう告げた。
「…………ぇ?」
何を言われたか理解していない。
どころかクソガキは手前の平手打ちをされた段階で脳が追い付いていない。
「貴方を皆心配していました。
私も貴方の事が心配で気が気ではありませんでした。
そして先生に至っては誘拐犯にたった1人で立ち向かったそうじゃありませんか!
誘拐はフリだった?
先生を騙すため?
そんなことのために、そんなことのために貴方は、貴方は…………なんてことを、なんて、なんで……」
途中から嗚咽に変わっていた。
主に手を上げるという一発即処刑になりかねない凶行に及び、挙げ句に説教。
随分……なメイドを持ったものだ、このクソガキは。
これの何処がオドオドしたメイドなんだ?という疑問がある人もいらっしゃるでしょう。
この後に出てくる鉄の心臓を持ったクールでハードなメイドやテンプレドジっ子メイドの皮を剥いで被った●●●メイドに比べるとオドオドしているのです。メタ視点で見ると相対的にオドオドしているのです!なので間違っていません。
ちなみに常識の高さは
オド≒アイアン>>>>>>>>>>ドジっ子メイド
となっています。
ブックマークありがとうございます。




