表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1693/1758

誘拐事件の追跡

 「なるほど、坊ちゃんが誘拐された可能性があると……」

 買い出しに出ていた執事へと報告をすると、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてそう答えた。

 「大変申し訳ありません。彼の計画に気付いていながら報告を怠った私の落ち度です。」

 頭を下げる。正直、クソガキがコックにお願いをして勝手にやったことだ。権力者の息子とはいえ……権力者の息子だからこそあの年齢なら当人の責任となる。

 そうでなかったとしても、この町の裏の連中を紹介したコックに責任が回ってくる。

 一介の家庭教師が責任を取るという形で介入するのは道理に反する。

 「いいえ、それは貴女の責任ではありません。」

 道理に反する貴族が今まで大半だったお陰でこの反応は新鮮だ。

 「ですから……どうか、落ち着いて下さい。お願いします。」

 「落ち着いています。どうか、ご心配無く。」

 執事が懇願(・・)した。

 シェリー君の今様子がどのようなものか、想像できるかね?

 裏路地連中を片端から締め上げてたった一人の人を探す準備万端といった表情だ。

 裏側の人間とて、こんな虫も殺さぬ少女がこの様子でやって来たら顔色を変えて逃げ出すさ。

 残念ながらそうなった場合、こちらは逃がす気がさらさらない様子だがね。

 「私は町を探します。もしそちらで進捗があった場合、こちらを使って下さい。」

 そう言ってシェリー君が取り出したのはとある魔道具。

 「簡易的ですが連絡が取れる魔道具です。使い方は魔力を流して話すだけ。それでは、失礼いたします。」

 そう言ってその場を後にする。執事は渡されたものを見て、呆気にとられていたが、ハッとなってシェリー君の背中にこう投げかけた。

 「先生、くれぐれもこの件は秘密にしてください!」

 続く発言を遮る様にシェリー君が言葉を重ねる。

 「露見した場合に事件が複雑化する可能性があるから。承知しております。

 それでは改めて、失礼いたします。」

 家庭教師、シェリー=モリアーティーはその場から消え去った。

 執事は手元の魔道具を再度見て、再度困惑した表情を浮かべた。

 これほど小型で通信が可能な魔道具なんて、本来は軍事機密レベルの代物なのだから。

 「次はどうする気かね?

 本来この町で会うはずだった人間とは会っていない。君が目撃したのが最後だ。

 町は広大でローラー作戦は現実的ではない。人手が足りない。何より情報が外部に漏れるのはもっとまずい。誘拐犯が別のもっと厄介な連中に人質を売り飛ばす可能性さえある。

 となれば、次の一手はどう打つ?」

 誘拐犯との対峙。この構図について、何故か(・・・)私はよく知っている。

 相手(・・)がどう出るか?

 どんなことが好ましくないのか?

 そのために何を避けるか?逆に何が避けられないか?

 私が知っていることは、ことごとくシェリー君に伝えた。

 「誘拐事件の場合、身代金の受け渡しが犯人と接触する唯一のチャンスとされています。犯人は警戒して、不必要に表に出て来ないのですから。

 それは、捜査する側も犯人側も承知しています。だから警戒されてしまい、死角にはなり得ない。そうなれば人質の身に危険が及びます。

 だから私が追うべきは犯人ではありません。追うのは人質です。」


 昨日またもランクイン!ありがとうございます。

 昨日の後書きに追記したのですが、アニメのOPEDを歌って下さった方々の躍進が、凄い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ