『おまつり』の準備
『モラン商会 モーブ支店』
それはベッドタウンの一画に堂々と看板を掲げていた。一等地、ではないがそれなりに良い広さで、それなりに良い立地である。
そこには多種多様な商品があり、多種多様な商会員がいて、そして太陽揚げの店が併設されていた。
「自称元祖や本家や見ず知らずの創始者直伝が作ったものよりはこちらを食べた方が有意義だな……」
店の横にはこんな文字があった。
『太陽揚げの調理器具一式リース可』
『業務用太陽揚げの粉販売中 一袋から』
『作り方講習もやっています 申し込みはこちらで』
「流行っている理由がわかりましたね。」
「模倣犯を取り締まれないなら模倣犯を宣伝要員にして利益を巻き上げる。潰す手間を考えるくらいなら手駒にするとは、商魂の逞しいことだ。頭が下がる。」
しかも面白いことに、これだけ流行らせておいてこの店がしっかり一番繁盛している。
列は他の店より少しだけ長い程度だが、コンロの数、店員の数と練度、回転率、売れ行きは他と桁が違う。
特に元祖や本家を大々的に名乗ってはいないが、『自称元祖や本家には決して遅れを取らない』という商人の意思表示がそこにはあった。
「あの方が支えてくださる限り、モラン商会は安泰ですね。」
あの商人がいる限りモラン商会は嵐の発生源だよ。
大きな都市にはなんでもある。人がある、金がある、ものがある、そして夢がある。
大きな都市にはなんでもある。悪意がある、暴力がある、武器がある、そして闇がある。
「お前達がそうか?」
大通りと大通りのちょうど中間。緻密に計算された爆破によって出来たわけではない、
ゴミと欲望とその残滓が積み重なって出来た迷路の奥で、場違いな子どもが見上げた先。
ごみ溜めを玉座にしてふんぞり返るスキンヘッドの大男。
黙々と砥石で得物を研ぐ痩せぎす男。
フードを目深にかぶり、男とも女とも人とも言えない何か。
「だったらどうする?合言葉でも確認するか?」
上から目線。物理的にそうだがそれ以上に子どもだと心の底から侮っている。
「良いよそんなもん、話はついてるんだろ、さっさとやるぞ!」
侮られてたまるかと暴れたいところをグッと耐えて飲み込む。
「で、計画は?」
こちらには目もくれずに砥石と刀身に向かっている姿にイラっとするが、抑える。
「聞いてねぇのかよ!ったく、ちゃんと読んどけよな…………」
用意しておいた自分の計画書を投げて渡す。
男達はそれを見て黙っていたが、読み終えたのか笑い出した。
「なんだよ、何がおかしいんだよ!」
飲み込んでいた言葉が飛び出した。
それがまたおかしいのか三者三様に矢張り笑う。
「いいな、最高だなクソガキ。いいぜ、任せとけよ。」
笑いが消えて、鋭い眼光がモンテル=ゴードンに向けられた。
「ッ…………じゃぁ、始めるよ。」




