泥遊びしましょあっぷっぷ
速さは相手の方が圧倒的に上。
堅牢さで考えても相手の方が圧倒的に上。
持久力は考えるまでもない。
だが、近接格闘戦になった今、圧倒的優位に立つのはシェリー=モリアーティーだ。
相手の方が速いなら、その動きを予測すればいい。
後ろに回り込んだところを逆にカウンターで急襲する。
『身体強化』は無しなので、筋力はそのまま。だが瞬間的な強化にしたことで強度は折り紙付き。素人がそれを不意打ちで食らえば面食らう。
「⁉」
驚いたか?自分の方が出力が大きいのに平手で弾かれた事実に。
相手の方が堅いなら、堅さの関係無い瞬間に差し込めば良い。
あるいは……
「筋力や強度を底上げしても、それを扱う技術が無いとその力は半減します。例えばこんな風に……」
堅さなんて関係の無い戦いに持ち込めば良い。
投げ技、関節技、絞め技……近接格闘に持ち込むならこれくらいやって見せろと言わんばかりの武術の数々をありったけ叩き付ける。
『身体強化』と『強度強化』があるお陰で致命傷にはならない。だが次々繰り出される多様な攻撃は正常な判断を奪い取る。
持久力が無いなら、短期決戦に持ち込めばいい。
猛攻に抵抗するために飛来する乱雑な猛攻。それを的確に防ぎ、返し、的確にその穴を穿つ。
隙はここにある、隙はこう突く、乱雑な動きや考えが生む隙はこんな危険を生むと実践して教える。
速さは無いが、的確で正確な魔法の制御は単純な速さを凌駕する。
「ーーーッーーーッーーーッ………………」
近接格闘の距離から離れ、乱れた呼吸を必死に戻そうとする。
不利なシェリー君は当然消耗している。だがそれを表に出さない。
純粋な魔力量で比較すればシェリー君の方が圧倒的に少ない。だが、今切れる手数と種類となればシェリー君に軍配が上がる。
ムキになるクソガキ。その目はシェリー君を真っ直ぐ見ていた。怒りで冷静さは欠いている。だが逃げ出そうなんて、投げ出そうなんて発想は既に吹っ飛んでいる。
「次は『地形操作』の魔法をお見せしましょう。」
その言葉に対してクソガキは構え、魔法の準備を始める。
使おうとしているのは……『水流操作』だ。
「ではいきますよ。」
『地形操作』
真正面の地面から土の槍が急成長してクソガキに向かう。
本来の威力だとクソガキの頭がシュラスコになるので先端は潰してある。が、先日よりも速度は上昇させているのでまともに受ければ頭が揺れる。
『水流操作』
クソガキが準備万端の状態で放水する。
直撃はした。だが槍を押し流す量も粉砕できるほどの水圧も無い。
だが、槍の動きが止まった。
「魔法はイメージが大事。なら、泥にしちゃえば使えないだろ!」
笑った。
「…………」
笑った。
イメージと実態が解離すると魔法の発動に悪影響を及ぼす場合があります。
なので、液体の水の要領で固体の氷に干渉すると失敗します。水とアルコールなら同じ要領で干渉可能です。ただ、突き詰めていくと矢張り解離が起こるので精度の高い魔法を使う場合は対象物をよく知っておくことを推奨します。




