座学の時間 ~『地形操作』について~
遠い無関係の土地の祭りや伝説とは関係無い現在、ゴードン家にて。
「『地形操作』の魔法で一番起りやすい失敗は、魔力不足です。
既存のものに干渉する系統の魔法には、他に水や空気に干渉するものが挙げられます。
『地形操作』が操るのは土。つまり、水や空気と違って全体が見えません。なので、最初に加減が解らずに使おうとすると、魔力を広範囲に散布する形となって、魔力不足になるのです。」
魔法には大まかに2種類存在する。
1つは既存のものに干渉するというもの。
そしてもう1つは、その場に存在しないものを新たに生み出すというもの。
前者は身体強化や強度強化といった解りやすいものもそうだが、『地形操作』や『気流操作』、水辺での『水流操作』もこれに該当する。
これは既存のものへの干渉にだけ魔力を消費すれば良い。だから魔力消費は少なくて済む。
対して後者は『火』や『電撃』の魔法が該当する。
こちらは魔法で存在しないものを『新たに生み出す』という性質故に魔力の消費が激しい。
が、それだけではない。
『新たに生み出す』ものはそのままばら撒くだけではでは意味がない。
そうすると生み出したものに干渉する必要がある。
クソガキが使った火球のメカニズムを分解すると『火を発生させる』・『発生させた火に干渉して球状に整形する』『火球を射出する』ということになる。
結局干渉することになる。生み出し、加えて干渉もする。だから消費魔力が多い。
シェリー君が火や雷を雑に切らない理由はここにある。
「『地形操作』を使う上で『粘土』というイメージをすることがあると言いました。
ただし、粘土をイメージするときには、『どれ程の大きさの粘土の塊を扱うか?』ということを強くイメージして下さい。
漠然としたイメージで地形を操ろうとすると魔力がイメージに引っ張られて霧散して、魔法は発動しない上に魔力が枯渇して非常に危険です。」
地面に手を当て、掴む。
すると、切り分けられたチョコレートケーキの様に地面の一部が切り取られて持ち上がる。
「初心者が魔力不足に陥りやすく危険、ということで植木鉢に土を入れて教えるという方もいますが、魔力が多い場合や魔力をイメージできる場合は、鉢の中で魔力が飽和してしまい、魔法の発動が阻害されるという欠点があるので、今回は植木鉢を使いません。
何より、『自分で干渉範囲を区切る』というのは他の魔法を使う上でも重要な技術なので、覚えることで武器になります。」
現在、『座学』の最中だ。
「さぁ、ここからが基礎訓練です。」
折角現物があるんだ。座学だからと言って部屋にこもるのは勿体無い。
干渉するタイプの魔法は省エネと言いました。
ただし、砂浜に干渉して巨大な壁を作るとなると……お察し下さい。
Q.かの淑女が土ボコをやったらどうなるか?
A.ジョーカーエクストリームをご存じですか?あれになります。半分だけ。




