土ボコで火に勝つ方法
昨日一昨日とブーストかかった理由、もしかしてアニメオープニング関連ですかね?
だとしたら、ありがとうございます。
膨大な熱エネルギーの塊がシェリー=モリアーティーに狙いを定め、放たれる……。
『地形操作』
規模は最小。ほんの、本当にほんの少しだけ、魔法を使えない子どもでも起こせる程度の変化しか起こさない魔法だった。
だが、モンテル=ゴードンの足元の地面を少しだけ『ボコ』という音と共に浮き上がらせたそれは、特大火球の軌道を上へと反らす。
特大火球は空を焼くだけで終わった。
「地形を操れるということは、相手の足元を掬えるということ。攻撃のタイミングや狙いを狂わせる。」
何とか踏み止まろうとするが、その隙に次の一手、否一足が打たれる。
『地形操作』
『強度強化』
『身体強化』
シェリー=モリアーティーの足元の地面が『ボコ』と音を立ててカタパルトの様に少女の体を前へと撃ち出す。
本来なら地面も少女も脆弱で、カタパルトという暴力的な手法は耐えるべくもない。
だが、付与された堅牢さによってそれは可能となり、速さを手に入れる。
カタパルトが少女を射出すると同時に、少女自身も己を奮い立たせて前へ。
その力強さは本物のカタパルトと遜色無い。
「ッ!」
来る。
動けない。
次に何をするかも考えられない。
踏み止まろうとする身体から力が抜けて、よろめき落ちる。
そのお陰で真っ直ぐ発射されたカタパルトの軌道から外れる。
少女は風を切って横切る。
間一髪、何を逃れた。
そう考えて、安堵してしまった。
『地形操作』
少女が駆ける道の先、地面から奇妙なものが現れる。
人の肩幅ほどの壁。だが、横から見るとそれは地面と垂直ではなく弧を描いているとわかる。
直線的に進んだ少女はその壁を蹴り上がり、勢いを殺さないまま縦に軌道を変更する。
目的は勿論。
「これが、貴方に見せることができる最大の魔法です。いかがでしたか?」
いつの間にか地面から生えた土の槍に拘束され、槍の上で屈んで少女は泣き顔を覗き込む。
「モンテル様、ハンカチをどうぞ。」
「いらない。」
合流したオドメイドが差し出したシワ一つないハンカチを突っ返し、袖で涙を拭く。
涙の後は薄れた。だがその目は捕食されるウサギちゃんの様だ。
そうこうしている間にシェリー君も後始末が終わった。H.T.も回収済みだ。
「さぁ、気を取り直して魔法のレッスンです。最初に教えるのは『地形操作』です。」
「………地味じゃん。火とか雷使いたい……」
唇を嘴の様に尖らせる。
「私は好きです。」
目を輝かせる。何を考えているのかと呆れたいところだが、『地形操作』は農耕の分野でも盛んに研究・使用されている。正しい使い方と言えば正しい使い方だ。少なくとも落とし穴を塞いだりカタパルトにしたり槍として使うよりも余程真っ当だ。
「勿論、火や水、雷や空気に関する魔法もお教えしますよ。しかし、『地形操作』が最も基礎的な魔法の鍛錬に向いています。
これからそのことについてもしっかり説明いたしましょう。」
某小説を読んで思ったのです。土ボコ、近接戦に持ち込めればかなり強いのでは?と。
今回は、魔法の狙いを反らす、妖怪首置いてけ式土壁、アクロバットの足場として使いましたが、近距離戦で見え辛い足元に置いて転倒させる、踏み込みや距離を取る時の足を引っ掛けて止める、尖った石を足下から飛び出させて地雷にするといった使い方もあるのでかなり嫌です。
あのお嬢様、剣を使った近接戦前提だったので、これと蛇のおもちゃを使えばジオルド様、やれる!
という、大先輩の小説のワンシーンを見て思っていたことを自分の小説でやってしまいました。お騒がせいたしました。
因みに今のシェリー君が当時の脳筋教師とやりあえばストレート勝ちできます。




