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妖精の使用人がいても

 某漫画で一番好きなキャラは銀の君です

 さぁ、昨日……一昨日暴走した大馬達はすっかり元通りという話だったが……どうなっているだろうか?

 後学のために大馬の厩を見せてもらいつつ、大馬を見に行こう。


 振動、重量、動き、温度、魔力、それらを感知する魔法を破壊しないように掻い潜る。

 防音、温湿度調整、換気、送風それらの魔法は放置。

 無事潜入完了。


 「空気が、澄んでいますね。」

 高い天井に広々とした空間。大馬の巨体が並んでいても狭さを感じない。

 そして、動物特有の臭気も無い。仕込まれた術式の中にあった換気の魔法がうまく働いている。

 「ヒタマス=ゴードン著の『上手な大馬の育て方』によると、大馬は温厚な性格であるがその巨体と膂力ゆえに決して臆病ではなく、夜はぐっすりと眠るとあったな。」

 「著書通り。当然と言えば当然ですね。

 しかし、夜の厩がこうも明るいというのは、少し奇妙に感じますね。」

 今、シェリー君は天井から照らされたランプの光に照らされて地面に影を伸ばしていた。

 「著書によると、大馬は瞼が厚くて目を閉じればちょっとやそっとの光は遮断出来る、とあったからね。

 それに、人が動くときはこの程度の明るさがあったほうが、都合が良い。」

 大馬という種そのものが温厚で余程のことがない限り怒らない、気にしない。著者曰く、構って欲しいあまり眠っている時に首に抱き着いたが結局翌朝まで起きなかったという記載があるほど。

 『蹂躙馬』という名とは正反対の温厚な馬達。その厩舎は穏やかで快適な空間であった。



 光が照らし、影が出来る。

 「実に下種な悪党が好む環境だな。」

 「明かりがあるのに、ですか?」

 「明かりがあればこそ、だ。

 これがすべて暗闇であったら、そちらの方が寧ろ安全な可能性さえある。相手も見えないからね。

 だが、こうして中途半端に照らすという環境は、部分的に潜む闇を作り、部分的に照らす光を作る。

 すると何が起こると思う?」

 「悪意持つ人間は闇の中に隠れ、光に照らされた場所を安全地帯だと思って集う人々を狙う……と言いたいのですか?」

 「大正解だ。

 人間の目は、ある程度の暗闇には適応出来るが、適応には時間がかかる。

 暗闇から狙う視線なんてものにはまずまったく気付けないと思っておくといい。

 だから、観察することだ。

 目に見えない闇ではなく、闇の中の何かが光に残した痕跡を、だ。」

 足元の草や馬糞を踏みつけた跡、中途半端に掃除されている厩、先程まで使われて片付けがされていない掃除道具。

 それに何より。

 「いくら大馬が気にしないからと言って、誰もいない厩を照らす意味は無い。

 入口付近に明かりのスイッチはあった、しかも蓄光塗料付きときた。

 普段はこの明かりは点いていない。」

 「誰かがここで掃除をしていて、私が誰か解らずに不審者と間違えて隠れた可能性は……」

 「君は今、照らす光の中に居るんだ。見れば直ぐ気付くだろう。

 それでも出てこないということは、それは君の顔を知らない招かれざる客か、あるいは……」

 「あるいは……?」

 「君が紹介されていない恥ずかしがり屋の妖精の使用人さ。」

 呆れられはしなかったが、趣深い視線を向けられた。



 申し訳ありません。当分の間投稿時間や頻度がバラバラになるかもしれません。

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