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光霓に惑わず進む

 『注目の(まと)』という言葉がある。これはまさにそれだ。


 暗がりで剣が光っていた。

 それは月光を反射させているという意味ではない。文字通り自ら輝いているのだ。

 蛍のように、明滅していた。

 「時間がありません。手短に済ませます。」

 構えは普段の長剣と変わらず、だが暗闇の中では刀身が映える。否応なくそれに視線が吸い込まれていく。

 判断力が有ろうが無かろうが関係無い。人の目の及ばない暗闇の中、本能はそれを求める。故にそれに注目せざるを得ない。それが凶器なら猶更だ。

 2人の急所目掛けて振り下ろされる剣閃。それは暗闇で目を凝らせば見える。追える。間一髪で躱せる。

 だから躱した、目前に迫り明滅するそれを際で躱した。それに釘付けになっていた。

 だから気付けなかった、凝視すれば月光を反射させて煌めく何かが耳元に迫っていたことに。

 「所謂、意趣返しというものです。」

 目の前にいる二人の内一人はあの狙撃手だった。

 後ろから音を出して困惑させるあれを参考にしてシェリー君が仕掛けた魔法。

 『泡爆弾』

 耳元で煌めくのは水滴。それが今、シェリー君の命で爆ぜる。

 光剣の陽動、そして本命は耳元での爆発。

 皮膚を裂き、骨を砕く程の殺傷力は無い。だがそれは耳朶を打ち、一瞬動きを止める。

 「魔法で肉体をいくら強化しても、脆い部分は矢張り脆い。魔法という過信がある分付け入り易いくらいだ。」

 五感はその最たるもの。聴覚は遮らない。

 「そしてもう一つ、真なる光剣をお見せしよう。」

 一瞬の硬直。淡く明滅している光剣が迫る。

 耳元の爆音でほどんど判断力が吹き飛ぶ中、辛うじて残った本能がそれを躱すべく剣閃を追い、体を死から遠ざけんとした。

 注目の的だった。

 「弾丸が的を狙うなら、的から弾丸を狙うことも可能だ。」

 明滅していた光剣が今までの比ではなく強く光る。

 予め備えていたシェリー君の被害は微少。だがその動きに注目していた2人はただでは済まなかった。

 寸前までシェリー君とコックに徹底的にしてやられ、手首から刃が生えて血だらけ、挙句に薬物で強制的に興奮状態。

 更に止めとばかりに聴覚を潰され、視界は白く染まる。

 冷静さの1つや2つ取り戻したとて、もう遅い。


 閃光はコックの目を覆い、捉えられていた2人の目を晦まし、淑女の秘密を盗み見る連中の目を強引に閉ざす。


 『反罪術式』


 光剣が光を放つ中、シェリー君が術式を組み、順番に4人に触れる。

 必要なのは、『異常な興奮の原因』とその下に潜む『もう1つの無粋な仕掛け』の除去。

 光の中でシェリー君だけが自由に動き、4人の根本に潜む邪悪を徹底的に破壊し、そして作り直した。

 目撃者はいない。


 カラドボノレグ!

 とある聖杯探索マスターにしか伝わらない戯言、失礼いたしました。


 連日Xにて本作の宣伝をして下さる方、ありがとうございます。

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