侵入者の跡片付け、無事終わる訳もなく……
そのまま何事も無く終われば、今晩はこのまま大人しくベッドに戻る。
それで終わる。そう、何事も無ければ。
不侵者を拘束していた縄が突如切れた。しかもすべて同時に。
縛りが甘かった訳ではない。縄が劣化していた訳でもない。単純に縛られていた手首の皮膚を突き破って小さな刃が生えて、それが縄を切った、それだけの話だ。
「うぉああああああ!」
拘束から解放された連中が4人とも起き上がり、叫び、逃げ出す。
気絶していたフリをしていた?いいや、先程までしっかり気絶していた。
目が虚ろで涎を垂らし、走る姿勢は滅茶苦茶。それはまるで興奮状態にする薬物を過剰投与した結果の様……いや、まさにそのものだ。
「おい!」
コックが気付き、2人の足を捕まえて地面に引き倒して拘束する。暴れているがコックの腕は万力のようにガッチリ掴んで離さない。
だが残念、コックの逞しい腕は2本しか無い。
残る2人が逃げ出し、こちらへ向かってくる。
「なんということを……」
「こんなリスクのある仕事をやらせるんだ。失敗した時の保険は当然仕込むさ。」
持ち物や奥歯を調べることはあっても、皮膚の内側を切り刻んで調べることはしない。確かに取り落とすことはなく、見つからない理想的な場所だ。
刃と薬を埋め込んでここに向かわせ、時間か一定条件を満たした場合に刃と薬が弾ける様にしておけば、逃走の切っ掛けを生み出せる。
あるいは、余計なことを喋る前に始末が出来る。正に保険だ。
静かに怒りを燃やすシェリー君が構える。
「口封じ目的ならこれも序の口。
半端な暴れ方をさせて敢えて止めさせて、制圧した連中ごと……ドカン。」
『手に入らないのなら壊しちゃおう。』という幼児の考え方。
だが非人道的で合理的な出だ。
「良い趣味をしている。」
「悪辣極まりないです!」
そう言いながらH.T.を構える。
「下手に気絶させると仕掛けが作動しかねない。
モタモタしてると向こうの連中も始末されかねない。
やるならあの術式だが、動いている人間に対して使える自信は?」
「ありません。どこにあるのか場所もわかりませんし、なるべく安静にして頂かなくては。」
「気絶無しで錯乱状態の人間を大人しくさせる手に心当たりは?」
「無いわけではありません。」
「出来るのかね?」
「やってみせます。でなければ彼らは無事では済みません。それに……」
「それに?」
「教え子が見ている前なので、格好悪いところは見せられませんから。」
視線を一瞬屋敷へと向ける。そこには未だ、クソガキの瞳が2つ輝いていた。
合理的ではない、論理的ではないと言いたいところだが、普段私が考えていることだから言い返す事は出来ない。
「では、健闘を。」
「勿論です。」
H.T.を構える、変形してそれは長剣の形を結ぶ。だが、ただの長剣ではなかった。
とある奇怪な性質を持ったそれを見た皆の視線は釘付けになった。
ライトアニメ展、ラストスパートです。皆様、是非来て下さい。私は結局3回行きました。




