表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1628/1761

隠された柔軟の切り札

 「『距離を詰めれば狙撃手なぞ恐るるに足らない。』と、私に豪語した奴は沢山いました。」

 「それで、そいつらはどうなったのかね?」

 「口にした奴らはもう全員いなくなりました。」

 謙遜はしない、傲慢でもない。ただ、事実を淡々と述べている。

 「『ガンマンとスナイパーは違う。』と前に言いました。

 が、生き残っているスナイパーは皆ガンマンとしての腕前も持っています。

 そうでなければ生き残れない。」

 スコープを覗いて引き金を引く。破裂音と共に風上の方からこちらに突進していた巨大な塊が崩れ落ちるのが見えた。

 「スナイパーは狙撃ポイントを得るためには先ずガンマンにならないといけない。」

 前に撃った猟銃とは違う、懐の大口径の拳銃を素早く引き抜きこちらに銃口を向ける。

 冷静、合理的でありながらも獰猛な獣を射殺す凶暴な目。

 そして何より、その一連の動きは無駄がなく美しいものだった。

 引き金を引く、破裂音と共に発射された鉛玉は獲物の眉間を正確に撃ち抜いた。

 「見事だ大佐。君は矢張り超一流のスナイパーであり、超一流のガンマンだ。」

 称賛の拍手と共に背後で大猪がこと切れた。

 「スナイパーもガンマンも、私にとって違いはありません。『引き金を引いて必ず殺す』そこに違いはありません。」

 「君ほどの腕でそれを言われては、誰も否定は出来まい。」




 距離を詰めてインファイトに持ち込む。全身を隠せる程の大盾とはいえ、非常に薄く軽い。近距離で振り回す得物としては悪くない。少なくとも狙撃用の銃相手なら余裕を持って勝てる。

 だが敵もさるもの。柔軟な体を駆使して盾を躱しながら変則的角度で弾丸を差し込んでくる。

 弾丸が切り裂いた空気が全身を掠める。

 首の後ろから、脇の下から、指先から、袖の下から、およそ銃口と弾丸が飛び出してこない場所と角度から飛んでくる。

 躊躇い無く人を殺せる目をしている。

 だが、なぁ……。




 「殺せていない。」

 先程から何度も何度も撃っている。

 魔法を使った、自分の柔軟性を駆使した、巧みな曲撃ちをしている。

 だが当たっていない。

 一発当たれば致命的な弾丸を使っておきながら、致命的に傷を与えていない。

 「気付かれている段階でスナイパーとして失格。

 ガンマンとしてもこの様だ。

 なんでこれだけ弾を無駄遣いしてこの間抜けは退く選択すら出来ない?」

 「教授、この方の技術力は目を見張るものがありますよ。事実私は攻めあぐねています。」

 「私と会話する余裕があるし温存もしている。君の成長を加味したとて、だ。

 自分がプロのスナイパーやガンマンだと思い込んでいるこの表情は見ていられない。

 早く終わらせてくれ。銃を使う参考としてこれは間違い無く間違いだらけだ。」

 「……教授のお知り合いの方は余程の使い手なのでしょうね……。

 少し気になることがあったのですが、仕方ありません。

 レイバック様のご助力に向かうとしましょう。」

 インファイト状態での硬直状態を一旦解くために距離を置いた。

 相手がこちらの様子を伺っている。

 シェリー君は自然体で盾を構える。

 銃口が左肩から伸び、発射される、狙いは首だ。

 盾でそれを弾く。だが、弾く金属音に混じって破裂音がもう一つ時間差で響いた。

 盾で視界が遮られた隙に隠された二挺目が放った弾丸。

 軽いとはいえ、首を守るために構えられた盾は、大腿部を狙う弾丸に対応しきれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ