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反面教師(家庭教師)

 無言満身創痍のお茶会を終え、解散した。

 2人とも始めてまともに魔力を使った状態。明日までに自然回復して2人とも次のステップへ……というのは難しいな。

 「では、参りましょう。」

 夕食まで1時間と32分。明日の準備は既に終わっている。

 残り時間でやることは勿論……

 「こちらの書籍は修理の範疇ですね。

 こちらは……状態はかなり悪いですが間違いなく希少本。専門家に問い合わせた方が良いと思います。」

 書庫の整理をしていた。

 いや、何故そんなことを?




 「カテナさん、どうしたのですか?」

 シェリー君が目撃したのは鈍器適正のある大きな本をえっちらおっちら運ぶオドメイドの姿だった。

 「あぁ、先せ……シェリーさん、お疲れ様です。」

 足元がおぼついていない。

 顔色が悪い。

 今の挨拶も消え入りそうな声量だった。

 「2人とも休むようにと、互いに互いが働かないように見ておくようにと言ったはずですよ。

 休息は怠惰ではありません。それもまた勉学の一環です。」

 その言葉には非難の意を多分に込めている。

 慣れない力を使った、魔力不足、その状態での消耗。

 三拍子揃った危険な状態だ。

 けど、あれれー、おかしいぞぉ。

 「どこかの誰かを見ているような、そんな親近感が湧くぞぉ。

 一体これはなんでだろうなあ?」

 この言葉には多分に非難の意と皮肉を込めている。たっぷりと、だ。

 「……何故でしょうね?教授の頭痛の先にある思い出に、そんな方が居るのではないでしょうか?

 可能であれば、会ってみたいものです。」

 ハハハ、こっちを見たまえシェリー君。あと、会いたければ鏡を見るといい。あっという間にご対面だ。

 「最初は、そのつもりだったのですが、飲み物を取りに行った際にバトラー様が忙しく働いているのを見て少し……つい……」

 『少し』や『つい』というにはあまりに業務量が多過ぎる。

 オドメイドは一応申し訳なさそうな表情はしている。罪悪感はある。どこかの誰かも見習ってほしい。そして罪悪感に従ってもらいたいものだ。

 「……今は一体、何をしているのですか?」

 「書庫の書籍の状態確認及び目録作りです。」

 「具体的には何を?」

 「状態の悪い書籍は処分、良いものは埃を払って虫干し、不明なものは保留に振り分けます。」

 「書庫の場所を教えてください。あとは私がやります。」

 「いえ、でも……」

 「私はこの屋敷に書庫があることを初めて知りました。当然、どんな書物があるか見当もつきません。

 貴方の主の(・・・・・)勉学の役に立つ書物があるなら、より良い学習に役立つかもしれないと思ったのですが。」

 主思いのメイドの心に、その言葉は刺さった。

 「では……シェリー先生、よろしくお願いします。」

 「お任せください。」

 ということで、現在書庫。バトラーと共に膨大な資料を整理していた。


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ありがてぇ。

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