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殺意の雑踏の中で

 昨晩、シェリー君はクソガキが混入させたものを回収した。

 念のため、厩全体を調べ、他に仕掛けが無いことを確認した。

 その時の大馬の様子を観察したが、穏やかなものだった。

 しかし現在、大馬は極度の興奮状態で厩の壁を破壊してそのままの勢いでこちらに向かってきている。

 クソガキの最初の落ち着き様から、クソガキが混入させようとした粉の正体は強壮薬と考えて良い。

 故にクソガキは自分の策が上手くいったと思っている。が、これをやったのはクソガキではない。

 先程の反応。シェリー君があの粉を回収したことをクソガキは本当に驚いていた。

 回収されたことを知った上で更にもう一仕掛けをして、自分がしてやられたフリをして欺こうとしている人のそれではなかった。

 これをやった奴は、クソガキが仕掛け、シェリー君がその仕掛けを回収した後で、クソガキの仕掛けたものと酷似あるいは同様の仕掛けを施してこれをやった。


 この犯人には明確な悪意・殺意がある。


 シェリー君かクソガキか、それは現状断定出来ないが、この手の輩は非常に素晴らしい思考をしている。

 「モンテル様、逃げて!」

 オドメイドが大声をあげてこちらに駆け寄って来る。

 その声に気付いた大馬達の一部の進行方向が変わった。

 この手の輩は、標的以外が巻き込まれても一切気にしない素敵な平等主義者だ。

 「カテナ!どうしてここに?」

 危機感の無いクソガキがメイドの姿を見てせっかく上っていた木から慌てて飛び降りた。

 着地の音は大馬達の耳に届き、一部の大馬達はそちらへ向かう。

 「いけない!」

 シェリー君が大声で叫ぶ。それで少しでも気を引ければ……と期待していたが、それは叶わない。

 三者に生命の危機が迫る。


 近くのクソガキだけなら、どうということはなかった。

 こちらにやって来るメイドも加わると話は別だ。

 最初から一手、既に遅れている。


 クソガキを助けねばならない。ここでこのガキが死ねばシェリー君はお役御免である。

 オドメイドも助けねばならない。死ねば二度とクソガキとの溝は埋まらない。

 シェリー君が助からねばならない。主義やモットー、哲学や美学に殉じて己を殺して他を助けても意味がない。

 それらは、生きてこそ意味があるのだから。死んだら何にもならない。


 大馬を倒す。ダメだ。

 あいつ等は温厚なだけでそもそもの生物として恐ろしく頑丈。この場で殺すには犯罪術式を持ち出さねばならない。そして、希少生物をそれだけ殺せばこの場にいられなくなる。

 大馬を正気に戻す。ダメだ。

 原因が不明で対処法が解らない。解ったところで、今止まったところで、完全に止まるのは全員轢き殺されて合い挽きになった後だ。

 大馬の群れを避けて2人を回収、その後シェリー君がそのまま逃げ切る。

 今のシェリー君の持ち物はH.T.だけ。女子ども1人ずつを抱えてこの殺意の雑踏を避けるスペックは無い。

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