予想通りの予想外と予想外
昨日の夜、厩に忍び込んで、とっておきの朝食を作っておいた。
隠しておいた赤い粉、アレは大馬に食べさせると少しの間興奮するようになる魔法の薬らしい。
普段なら、大馬達はあの暴れん暴君以外ボクの言うことを聞くけど、それでも皆大人しいから隠れるくらいしか協力はしてくれない。
あれを食べさせれば、皆もの凄い勢いで走り出すらしい。
後遺症は残らないらしいし、脅かすのには丁度いい。
腰を抜かしてもう二度とここには来ないようにするのには丁度いい。
「来い!」
パチンコで鍵は開いた。しかし、厩からは誰も出て来ない。
「な、なんで?」
それに答えるように家庭教師が手の中にガラスの瓶を取り出して……あの色!
瓶の中の赤色は、知っている。
「昨晩、貴方が混ぜた粉末は回収しました。
一応の解析をして、安全性が確保出来るのであればそのままにすることも考えたのですが、類似する物質や術式に心当たりがなく、効果は不明。しかし魔力量は尋常ではない。
心苦しいですが、予め危険と判断して回収いたしました。
仕掛けパチンコを外したと見せかけて厩の扉に当てた点は評価しますが、倫理・道徳については、考えるべきだと思いますよ。」
最後の最後、隠しておいたとっておきを台無しにされた。
全部最初からバレていた。
完敗した。
腹が立つ、イライラする、暴れたくて仕方ない。
けど、その中に何か、何か別の、嫌じゃないなにかが、あった。
「負け……」
言いたくはないけど、思わず口にしようとした敗北宣言。
それは、掻き消された。
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒン!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒン!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!ブラララララララララ!ヒンヒンヒヒンヒヒン!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!ブラララララララララ!ヒンヒンヒヒンヒヒン!
厩が壊れた。
元々あった扉や門、窓が開いたのではない。分厚く頑丈に出来て、壊れるはずのない壁が吹っ飛んだのだ。
この前の様に中から得体の知れない生物が飛び出して来たら、驚くだろうがそれはそれで納得が出来た。
だが、中から飛び出して来たのは全て大馬。背中から奇妙な植物が生えている訳でもない、手足を魔道具で拘束されている訳でもない。
温厚な顔付きの大馬達が目を血走らせ、涎をダラダラ流しながら飛び出してきた。
それだけ。だからこそ驚愕した。
「なぜ」
そう言いながらも、困惑はありながらも、体は動いていた。
成長している。
「なんだ、やっぱりボクの勝ちだ!」
クソガキはこれが自分のやった事だと思っている。だがそんな訳がない。シェリー君はクソガキの混入させたものを回収していたのだから。
だが予想通りの事態だと思っているが故に、この異常事態の中、冷静に近くの木に走り始めていた。
ここまでなら、対処は簡単だった。
2人なら、十分間に合っていた。
「モンテル様!」
オドメイドがこちらに駆け寄ってきたことで、そうもいかなくなった。
何かしらの節目節目の時、作中シチュエーションは大概ロクでもない。
因果関係でも調べようかと思いましたがシンプルにそういうシチュエーションが多いという結論に至りました。
それはそれとして、ブックマークありがとうございます。




