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小さな主従

 「カテナ、ありがとう。」

 自室に戻り、デザートを手にして追いかけてきたメイドから皿を受け取った。


 フォークで雑に2つに切り分けたデザートの片割れを指先で摘まんで食べ、不機嫌そうだった顔が少しだけほぐれた。

 「モグ……半分食べて。」

 長めの咀嚼の後、残った方をフォークと一緒にメイドへと差し出した。

 「モンテル様、よろしいのですか?だってモンテル様は…………」

 オドオドしながら、差し出されたものを見やる。

 「良いんだよ。確かにこれは美味しいけど、でももうお腹一杯だから。

 残したらレイバック、怒らないけど、がっかりはするでしょ。

 だから、手伝ってカテナ。」

 貴族の血統にあるまじき振る舞い。

 けれどそれを嗜める者はここにはいない。

 「……解りました。それでは、お手伝いさせて頂きます。」

 困ったような、動揺した様な表情が消え、柔らかく、笑った。

 差し出された皿を受け取り、歪に切られた大きい片割れを口にする。

 笑顔が更に花開いた。

 「美味しい…………嬉しいです。」

 「そう……良かった。」

 幸せな顔を浮かべるメイドを見てそう呟いた。




 「あの女、明日には追い出してやる、絶対にだ。」

 メイドが淹れた紅茶を口にして、強くそう言った。

 「モンテル様、何もそんな風に躍起にならなくても…………。」

 「許せるもんか!人を落とし穴に落として、馬鹿にして、許せるもんか!」

 「モンテル様、その落とし穴というのは、いったい、何のことでしょうか?」

 モンテルは自分の失言に気が付いた。が、もう遅い。

 「モンテル様、私はお願い申し上げました。

 これ以上子どもの様な事をしないようにと、人を傷付けないようにと、そうお願いしました。そして、約束すると、仰って下さいましたよね?」

 怒る訳ではない。カテナには自分の主に怒るなんてこと、そもそも怒りという感情がほとんど無い。

 「それは、そうだけど……」

 「私との約束を覚えていたのに、破られたのですね。」

 怒るなら、目を背けられた。責めるなら、耐えられた。

 けれど、モンテルはその表情には勝てなかった。

 「何故、そうやって人を傷付けようとするのですか?

 本日来られたモリアーティー先生は貴方の為に、何日もかけて、大変な思いをしてここまで来てくれたのですよ。

 だというのに……」

 「こ、今回は失敗したんだ!落そうとしたのに避けられて、作った落とし穴が落ちなくて、それなのにボクが踏んだら落ちて、お陰で泥だらけになったんだ!」

 「落とし穴を作ったのは間違いないのですよね?」

 「はい。」

 「道の真ん中に?」

 「道一杯に掘った。」

 「もう、ちゃんと埋めましたか?」

 「バレないように、全部埋めた。」

 「ケガはしませんでしたか?」

 「全部避けたんだよ。するわけないじゃないか!」

 「モンテル様、落ちたんですよね?大丈夫でしたか?」

 「……大丈夫だった。」

 「それは、良かったです…………モンテル様。」

 「はい。」

 「モリアーティー先生に落とし穴を仕掛けた事を謝って下さい。

 そして、旦那様と奥様に気付かれないようにと泥を落としてくれたことについて、お礼を言って下さい。

 家庭教師をお願いするのは、それからですよ。」

 「………………………………」

 「モンテル様。」

 メイドの追及に対して、主人は渋々頭をゆっくり下げ、上げた。

 「明日の朝、謝罪とお礼に行きましょう。私もご一緒いたしますので、頑張って下さい。

 それではモンテル様、おやすみなさい。」

 そう言って、カテナは主人の部屋を後にした。


 モリアーティー先生、モリアーティー先生ですよ。学園では聞く事の無い敬称です。

 これからどんな敬称で呼んでもらいましょうか?教官?姉貴?大将?

 ちなみに、姉貴・姉御辺りは既に呼んで貰う予定です。

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