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家庭教師としての働きは既に


 食事が終わり、当主夫婦とシェリー君、そしてひっそりと執事だけがその場に残る。

 食後の紅茶が注がれてから、当主が口を開いた。

 「改めて、先程出て行ったのがショーマス=モンテル。お恥ずかしながら、私の息子です。」

 申し訳なさそうな顔をする。ちなみに、シェリー君は日中のあれこれを報告していない。

 「今まで、彼に勉学を学んでもらうべく、何人もの家庭教師の方が来たのですが、誰に対してもあの様子で……皆三日と経たずに辞めてしまい、困っていました。」

 お貴族様の(・・・・・)お家庭教師様(・・・・・・)ともなれば、やんごとなき御身分だろう。そんな世間知らずがクソガキの調教方法なぞ知る訳がない。

 と言って、いつもなら腰抜けの家庭教師共を嘲りたいところだが、今回に関してはクソガキ側に問題が有り過ぎて全否定()出来ない。

 入り口前に巨大落とし穴を仕掛け、泥だらけにする気満々。

 あぁ、落とし穴なんて可愛いものだと侮っているなら、その考え方は今すぐ改めておくといい。

 気付かずに転落してしまえば受け身が遅れる。すると打撲や骨折、最悪の場合は重篤な後遺症が残る可能性もある。半端で浅慮な悪意でやる気なら、手に持ったシャベルは雪かき用にするといい。

 何より、平和ボケした素人でも知っている罠ということは、それだけ()果を残しているものということだ。

 あれは笑い事ではない。

 「だから言ったでしょう?寄宿学校にでも入れて鍛えて貰えば良いのです。」

 夫人が苦々しげに呟く。

 「それは言ったはずだよ。本人が拒否しているんだ。それだけは(・・・・・)絶対にダメだと。」

 我々はゴードン家の裏側を知らない。大馬の牧場があることさえ知らず、シェフが屈強な見かけで繊細なスイーツ作りを得手としていることさえ知らなかった。

 だが、知っていること、ここに来るまでに知ったこともある。

 私からすればどこまでいっても可愛げの無いクソガキだが、シェリー君には別の見方があった。

 だからこそ、シェリー君はシェリー君らしからぬ敵意を煽る行動を取り、今も次の手を考えている。

 「改めて確認です。私のここでの役割は、ご子息の家庭教師ということでよろしいですね?」

 「学園にはそう伝えている。ただ、最初に言っておくと、結果が全てではない。

 君がもし、上手くいかなくても、その時は君に別の事を頼み、学園に上手く言っておくことだって出来る。」

 当主が慌てて付け加える。家庭教師は文字通り藁にも縋る思いでやっているだけ。期待はしていないということだ。

 こちらの悪い様にはしない心算なのは解ったが、実に、実に、実に業腹だ。

 「明日から家庭教師としての仕事に取り掛かります。構いませんね?」

 「あ、あぁ。よろしく頼もう。」

 当主は僅かに戸惑っていた。

 なにせシェリー君のその時の顔は、とても困惑や不快感とはかけ離れたものだったからね。


 逆お気に入りユーザーさんと評価して下さった方が、増えていました。ありがとうございます。

 最近は感想もよく頂くのでホクホク顔です。

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