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お菓子の皇帝

 空気は相変わらず素敵なまま(・・・・・)。料理は相変わらず趣向と技巧を凝らした逸品ばかり。

 そうして素敵な食事の時間は過ぎ去って、デザートの時間になった。

 「しぇ、シェフより、『素敵な家庭教師様へ、歓迎の意を込めて。』だそうです。」

 緊張した面持ちのまま、オドメイドは配膳を終えた。

 「これは……随分張り切ったな……」

 「………………まぁ。」

 「…………………………………………。」

 「レイバック様には後ほど御礼を申し上げなくてはなりませんね。」

 配膳されたそれに誰も手をつけていない。

 圧倒されていた。気圧されていた。

 ただ、目にしたものの脳に容赦無く『美味』という情報が流れ込んできた。

 私の元の知識では、それの名の由来は『お菓子の皇帝』や『皇帝の帽子の形状に似ているから』というものだった。

 今、目の前にあるそれは『お菓子の皇帝』という名を冠しても何ら恥じない、どころかその冠でさえ霞むような代物だった。

 最上部に輝く色艶やかな果実達は見事なナイフ捌きによって彫像の様に飾られていた。

 彫像を支えるアーモンドを纏ったミルフィーユは、それが単なる台座ではなく、その彫像を冠するに相応しい皇帝の玉座として在った。

 「………………ご馳走様。カテナ、それは後で部屋に持って来て。」

 沈黙を破ったのはクソガキ。席を立つとオドメイドにそれだけ言って出て行った。

 「待ちなさい!」

 夫人が静止の言葉を口にするが、態度が伴っていない。これでは耳を傾ける訳がない。

 当主はと言えば、表情を変えずにそれを見送っていった。

 執事は表情一つ変えず、我関せずといった表情。執事が出しゃばるなど言語道断という訳だ。

 そして、オドメイドはと言えば。

 「モンテル様!」

 こちらを見てオドオド、当主と夫人、そして執事を見てオドオド。

 シェリー君が笑顔で返す。それを受けたオドメイドは逡巡して……

 「失礼いたします。」

 『お菓子の皇帝』を手に取るとクソガキを追いかけていった。

 「……先ずは、どうぞ召し上がって下さい。」

 当主は取り繕った笑顔でそう言った。

 現状はシェリー君が一因としてあるように見えるが、弁護するとあれ(・・)がなくてもこうなっていた。

 「では、頂きます。」


 フォークが、ミルフィーユを貫く。

 最高の食感を想起させる様に響き渡る音、そして手に伝わる軽やかな感触。

 中からは黄金色に輝くなめらかなカスタードクリーム。

 果実、ミルフィーユ、クリーム。それらを同時に口へと運ぶ。

 「おいしい……」

 正に三位一体。

 果実の酸味、ミルフィーユの食感、クリームの味わい。それらが互いを引き立て、美味が弾ける。

 単体でも美味なのが明白なそれらが一体となって相乗効果を生み出していた。

 コックの腕だけが、この場で至高の仕事をしていた。


 引用:https://www.henri-charpentier.com/products/cake/2978/

 引用サイトを見て理性が爆発しかけました。


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