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予定の前倒し。前のめりとも言う。

 日が暮れる中、シェリー君はバッグを引いて道を行く。

 後ろでは町人と話を聞いて駆け付けた警備官達が町の入り口で騒いでいた。

 素早い対応なことでなによりだ。


 さて……そちらはもうどうでもいいとして、こちらの対応をせねばならない。

 シェリー君を睨む。が、当の本人は目線を決して合わせようとしない。

 「で、どうする気かね?」

 「最悪野宿か一晩歩いてでも……」

 「そんなことを許すと思っているのかね?」

 「なんとか……なんとかなりますよ。     たぶん。」

 「なんとかなる?どうやって?

 君は初日からサバイバルや耐久レースをすることが淑女の試練だとでも考えているのかね?」

 「……いいえ。」

 今、シェリー君は当初泊まることを予定していた町を過ぎて、次の町へと向かっている最中だった。

 日没が迫っている中で、だ。

 なんでこんなことになったかというと………………



 「警備官の者です。」

 ワラワラとやって来る警備官達。

 「さぁさぁどうぞ、こちらにお座り下さい。」

 それを歓迎する町人達。

 「…………」

 余所者に対する少なくない疑惑の目。

 「では、私はこの辺りで失礼いたします。」

 という訳で、シェリー君が空気を読んで出て行った次第だ。

 「空気を読んで損失しか被らないのでは意味が無い。」

 「余計な争いや疑いを避ける上で意味のある行為だったかと。」

 「余計な争いと疑いを好む人間は空気を読む連中を真っ先に標的にするものだ。

 殴られる度胸が無いくせに殴りたい連中にとって殴り返される心配が無い相手は良い的だからね。

 心当たりが無い訳ではないだろう?」

 シェリー君は言い返せないと知っていながら意地の悪い言い方をする。

 あそこでは貴族としての序列がそのままカーストに繋がっていた。

 普段なら最下層の貴族連中でもシェリー君なら下に見る。そうして良いと思い込んでいるから。

 だからシェリー君は余計標的にされる。

 高貴なる青い血を受けるグラス()は何とも小さい事で大変結構。

 「今から戻ってもどうにもなりません。手が無いなら見つけ出す、作り出す、奪い取るという言葉を私は教授から教わったと思いましたが?」

 「君は最後の『奪い取る』に関しては否定的だったろうに……

 はぁ、もう戻っても遅い事は仕方ない。だが、君は闇の危険を軽視している。知らなさ過ぎる。」

 闇とはそこにあるだけで悪意を引き寄せる。

 太陽が照らす光の中で人は悪意を躊躇う。誰かに見られるやもと、自分の行いを咎められるやもと、考えて動きが止まるからだ。

 誰も見ることは無い、故に誰も自分の行いを咎める事がないと思った瞬間、人の心の奥の(悪意)は這い出て来るものだ。

 「今夜は月が出る。だが、月明かり程度では悪意は止まらんものだ。」

 月は見ていた……などという詩的表現をよく聞くが、そんなものに意味は無い。

 月は見ているだけで止めはしないし、証言もしないのだから。


ブックマークと評価を沢山頂きました。ありがとうございます。

そして、昨日投稿分でご紹介しましたが、2025年4月25日(金)よりDNPプラザ(東京都新宿区市谷田町1-14-1 DNP市谷田町ビル 1階)にてライトアニメ展が開催されます。

本作アニメも紹介頂きます。入場無料なので是非、来て頂ければと。(詳細は2025/04/18の近況報告にて)

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