番外:モラン商会の宣伝戦略3
話が飛びます。そして今日は二話投稿です。
モラン商会副会長、ジャリス。
すっかり大きく有名になって『新進気鋭の商会』と呼ばれる中に『大商会』という呼び声が混じり始めたそんな商会のナンバー2。
ナンバー1がこの商会の敷居を跨いだ事は一度も無く、当初軌道に乗るまでは細やかな指示書が送られて来たが、今は頻度が落ちた。だが売り上げは今も鰻登りで落ちる気配は無い。
実質的にはジャリスがモラン商会のナンバー1と言って差し支え無い。
《モラン商会にて》
「ジャリスさん、この前の騒動で増えた新人の研修が大方終わったっす。
で、業務適正や本人との面談も踏まえて振り分けるんで、面談の準備お願いするっす。」
傭兵時代からの相方兼後輩のレンが最近買い替えた机の上に書類の山を置く。ちなみに、机を買い替えた理由は簡単、上に乗せた書類の重圧で足が折れたからだ。
「……あぁ。そこに置いておいてくれ。」
「その机、使い心地どうっすか?」
「……悪くないな。傷が付かないし埃が積もらない。両者共に良い腕をしている。」
以前より大きく頑丈に作られた机はモラン商会の建築部門がトップ、カーペン=トーリョーの作だ。
そして、その机に『強度強化』や『電流操作』の魔法を付与して傷付き辛く更に頑丈に仕上げたのは新たにモラン商会に加わった男、ジーニアス=インベンターの仕事だ。
「自称で『そこそこ天才』って言ってたっすけど、謙遜もイイトコっす。
荷物の運搬用に幾つか車の魔道具を作って貰ったんすけど、反響ドッカンドッカンで売り物にしようって声もあるっす。
あ、その机の感想と車の魔道具の詳細についても書類あるんでお願いするっす。」
ジャリスの右腕、レンの後ろから大量に書類が積み上がった書類が勝手に動いて副会長の前へとやってきた。
よく見ると書類の山は小さな木の板に載せられ、その下には小さな車輪と小型の魔道具が取り付けられていた。
「動力で動くからお年寄りでも重い商品を簡単に運べる。しかも自動制御で荷物が倒れない。こんなもんを実用化レベルでいきなりポンポン作るんだから怖いっすね。
ったく、会長は自分を『仕事してない仕事してない』って言ってるっすけど、あっちもあっちで謙遜っす。
あんな逸材引っ張ってくるんだからもう値千金っすよ。」
「そうだな……」
「……そう言えば副会長、以前『幻燈』の魔法を応用した動く絵と吟遊詩人の歌と声を併せた娯楽、『幻燈動画』の事業覚えてるっすか?
あれの評判が中々で、雑誌のランキングにも載ったんすよ。
で、今回。いくつか『幻燈動画』作品が出揃ったってことで、展示会やるってことになりましてね……その書類もどうぞ!」
書類の山が増える。
「解った。そこにおいておけ。順番に見ていく。」
「よろしくお願いするっすよ。」
レンが副会長室を後にする。
部屋の中には表情一つ変えないジャリスの顔。
そしてその隣には机に固定されたジャリスが居た。
涙を流し、震える手でサインをして、口を大きく開いて何かを言っている様に見えるが、声は聞こえない。
「あぁ、解った。」
ジャリスの頭が喋った。
ジャリスの座る椅子にはとある調整がされている。それは一定以上の大きさの音を発生させると気流操作で真空の膜を作り音を遮断するという防音機能だ
そして、遮断されて聞こえなかった言葉はジャリスの顔を模したスピーカーを通して周囲に届けられる。
呪いの言葉も、奇声も、八つ当たりの言葉も、全てが変換されて発せられる。
「凄い発明をしてくれたな、自称そこそこ天才は。」
皆様にご報告です。
ライトアニメの展示会が開催されます。
もちろん、本作も参加いたします!
詳細は近況報告にて!
と、いうことで、詳細は今日の近況報告に詳しく記載しておきましたので、是非御覧いただければと。




