淑女の零なんて認められない
『淑女の零』
ショーマス=ゴードンがシェリー=モリアーティーを助けるという名目で使った制度。
それは、アールブルー学園に古くからあるものだ。
忘れられたその制度が久々に遂行されるということで、上を下へ右を左へ表を裏への大騒ぎになった。
ただ、それは前例を知る者が少なくて制度の利用に戸惑ったという意味ではなく……不名誉な『教師が生徒の邪魔をする』という痴態故に、である。
「この前の学園外で行った課題がどうなったかお忘れですか?」
「学園で卑しい商人なんてものを受け入れたと知られ、それが貴族令嬢を誘拐する手引きをしたのですよ!」
「評判を上げるどころか地に落ちた始末!恥を上塗りするつもりですか⁉」
「この前の課題が大失敗しているのに更に奇をてらった真似をして、いったい何がしたいのです?」
「あんな小娘に淑女の零などと……学園の品位を貶める気ですか⁉」
「そもそも、彼女は淑女の零には相応しくないでしょう?」
非難轟々。学園長に向けて反対意見が突き付けられる。
もっともらしい事を言っているが、要はこういうことだ。
『平民が大貴族に認められるのが面白くない』
『淑女の零』は本来、大変な栄誉である。
そもそも、学業の成績が高水準でなければこの制度の利用資格すら与えられない。
そして、貴族側にとって、この制度を利用するということは、メリットであるがそれなりのリスクでもある。
学園で優秀であっても箱入り娘がどこまで使えるか解らない。
他貴族との繋がり目当てでこれを利用することもあるが、家に招き入れることになる訳で、勘繰られる事や情報を抜かれる可能性も考慮しなくてはならない。それでもなお受け入れるというのはリスク以上のリターンがあるという高い評価の証だ。
最後に、この制度はあくまで『学園の授業の一環』として扱われ、最終年度に学園の授業に一切参加せずに卒業することが出来る。
今、この学園の長は誰か?淑女の零の受け入れに関して最終決定権が誰の手元にあるか、それを考えてほしい。
その人が一年分の授業を放棄して外部へ行く事を許容するという事態の重さたるや……言うに及ばずだ。
長年、この制度を使う事が認められずにいた。
長年、平民なんかより優秀で高貴な貴族令嬢が相応しくないとされてきた。
今回、認められたのは底辺身分の小娘である。
それは侮辱である。
面子丸潰れである。
面白いわけがない。
絶対に止めてやる。
名誉なんて与えるものか。
大貴族との繋がりなんて作らせるものか。
底辺身分の卑しい平民は一生下を向いてなければならない。
そんなことを考えて非難轟々。だがしかし、相手が悪かった。
1.5部もよろしくお願いいたします。




