それぞれの新天地へと7
「ナルホドナルホド。その『お姉ちゃん』はお勉強しにここに来たと。
で、会いたいから『会える魔法』を使える魔法使いになりたい、と。」
子ども達から事情を聴きながら特別サービスとばかりに空を飛び、分身し、触れても熱くない火を吹くドラゴンを呼び出していた老紳士は彼らの話をそう総括した。
「お姉ちゃんに会いたいですます。」
「魔法使いになれば会えます?」
「おじいちゃん!魔法教えて!」
幻と遊びながら子ども達は答える。
老紳士はそれに明確な答えを出すべく考えていた。
(その『お姉ちゃん』は、多分、少し前までここに来ていたというあの学園の生徒だろう。
『幻燈』を使える辺り、非常に高度な魔法教育を受けてるのは確定。
じゃぁ相当いいとこのお嬢様かな?
んー、そこは少し引っ掛かるな。子ども達の説明している人物像が庶民的過ぎる。ありあわせでおやつ作って走り回って遊ぶなんて考え難いな。
んー、多分通りすがりじゃないんだろうけど、お嬢様学校の生徒さんにしては妙だな…………どうしたものかな?)
考えを巡らせる。
そして、答えを出す。
「先ず、お姉ちゃんに絶対会えるとは言わない。なにせ僕は会ったことがないからね。見ず知らずの人を探すのは難しい。」
表情が曇る。
「けど、君達は『お姉ちゃん』のことを知っている。
それなら探しに行くことも出来る。その時に魔法が一杯使えれば、見つけるのは簡単になる。
何より、大魔法使いは有名になるし、目立つし、いろ―んな人に興味を持ってもらえる!
これならお姉ちゃん探しは簡単になるだろう?」
表情が晴れる。もう、キラキラした宝石の様に目が輝いている。
「僕はもうすぐ帰らなきゃいけないから直接魔法を教えることは出来ないけど……これくらいなら渡すことが出来る。はい、プレゼントだ。」
細く大きな手の上には色の違う指輪が三つ。
「何これ?」
「綺麗ですます。」
「お宝!お宝だ!」
「これは魔法の指輪。これを身に着けて生活していれば、これに流れる魔法の力と君達の魔法の力が混ざり合い、魔法を使う時の『流れ』を理解出来る様に…………えーっと、この魔法の指輪をつけて遊んでいれば遊びパワーが魔法パワーに変わるんだ。でも、僕ら大人は遊びパワーが弱いから君達子どもにあげちゃいまーす!」
キラキラが弾けそうになる中、3人に指輪が進呈される。
「すごいですます。」
「にあってる?ねぇにあってる?」
「ありがとう!大魔法使いおじいちゃんありがとう!」
「フッフーン、大魔法使いだからね。サービスしちゃうよ。」
4人が盛り上がる中、無表情で割り込む人影が一つ。
「ご主人様、こんなところにいたのですね、探しましたよ。
用事は済みました。直ちにお屋敷にお戻り下さい。」
中世的で、新緑を思わせる緑色の髪に寝癖が一本。緑色のスーツを着こなしていたその人の名は……
「もーう、ヴァレリエはタイミング悪いんだから……
ごめんよ諸君。大魔法使いのおじいちゃんは帰って悪い魔法使いを倒す戦いに身を投じなければならないんだ。さらば!」
「さよなら!」
「ありがとうございますです。」
「また会える?会えるよね?」
「さようなら、君らが偉大な魔法使いに成った時に、また会おう。」
従者と老紳士は子ども達に背を向けて街道へと向かう。
この後、子ども達は貰ったその指輪を身に着け、遊びパワーを魔法パワーに変えるべく存分に遊ぶのだった。
評価頂きました。ありがとうございます。




