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お別れだけが人生?

 反対意見が飛んでくる。

 露骨に表情が歪む。

 反論と言う名の罵詈雑言は一瞥で静かになった。

 「ゴードン家の家紋と当主のサイン付きの申請書。

 シェリー=モリアーティーの成績は一定の水準に達している。そして本人の同意もある。

 『淑女の零』に関する規則に基づいた結果です。もし、反対意見があるなら論拠を持って学園長室(私の元)に来るように。」

 紙吹雪が止み、淑女は職員室を後にする。

 追いかけて論拠を突き付ける者はない。

 それもそうだ。公平に、徹底的に調べ上げ、その上で淑女はあの結論に至った。思い付きの言い分や短絡的な反対意見では歯が立つ道理が無い。

 これで良いのだと、これが彼女にとっての最善であると、そう考えた(・・・)

 「……………………。」

 廊下を音も無く歩き、懐からあるものを取り出す。

 色褪せた押し花の栞。

 強力な魔法が刻まれている訳ではなく、特別な花が封じられている訳でもなく、名工名匠の品という訳でもない。

 それは淑女にとっての原点だ。

 この道を歩く上での指針だ。

 そして、忘れられない友人との思い出の品。

 「これで良いのです。」

 その言葉を受け取る者はない。

 彼女はそれを仕舞い、再び歩き始めた。


 彼女は淑女、ミス=フィアレディー。

 厳格で公正。そして何より生徒のために立つ者。たとえ生徒が茨の道に進むとしても、それが生徒の望みであれば止めはしない。止められない。

 歩み続けるだけだ。




 三日連続。

 「遊んだ!遊んだ!!遊んだ!!!」

 「次は何する?ご飯?お昼寝?冒険ごっこ?」

 「皆おちつくですます。順番に遊ぶですます。次はモリーお姉さんの番ですます。」

 子ども達とシェリー君は三日連続、遊び続けていた。朝日が昇ると同時に陽光で目を輝かせながらシェリー君を待ち構えていた。陽が落ちても夜の灯りで目を輝かせて伸びる影を追い駆け続けていた。

 体力の続く限り、体力が尽きても未だ未だ遊びたいという衝動で遊び、走り、笑い続けている。

 「…皆さん、落ち着いて下さい。私は構いませんから順番に遊んでいきましょう。」

 「ダメ!ダメ!それはダメ‼」

 「遊びたくないです?楽しくないです?もう、いやです?」

 「そんなことはありません。ただ、皆さんが楽しんで遊ぶと私も楽しいのです。」

 「そうなんですますか。」

 「そうなのですますよ。だから、次は何をして遊びましょうか?」

 シェリー君が笑顔を三人に向けた。

 「「「じゃぁ、ここでずっと遊ぶの!」」」

 目を輝かせていた。しかし、その輝きは今までのものと少し違う。

 「………………困りましたね。」

 子どもは知らないことが多い。だが、それは愚かだからではない。

 生まれてから今までの時間が少ないが故に知を得る機会も少なかった。ただそれだけ。

 考える力はある。

 愚鈍な大人の様に先入観や偏見も無い。

 だから……だ。

 「別れを切り出せずに悩むその表情を見て解らない訳がない……だろう?」

 「嘘が下手なのも困りものですね。」


 淑女番外編は暫く書きません。書きたいのですが多分脱線して大惨事になるので!

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