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残る後始末その8-7

 「何の(んの)ことです(ことす)?」

 流れ落ちる冷や汗は夜闇で見えていない。そう、私は未だ何もやっていない(・・・・・・・・・・)。完全に誤魔化すことができなくても致命的な部分にまでは辿り着かない。着かせない。

 「この近辺で不審火が相次いでいると聞き及んでいました。まさか貴女がやっていたとは……呆れ果てて怒りも湧きません。」

 鋭い眼光だけが闇の中で光る。仕方無い。

 「ちょっと前に()か馬車壊されて、怖くて逃げて、食用油買て零して、灯りで照らそうとしたらこれて、酷ないです?」

 「見苦しい言い訳ですね。ここは貴女の家ではなく、油も食用としては量が過剰過ぎます。

 何より、課題で貴女に指示した場所とここは離れ過ぎています。」

 見苦しい言い訳。その通り。けれどそれでいい。

 もうここまで来たら逃げられない。なら、抵抗するフリをして、そこに釘付けにする。

 「…………必要な物集めて来たんです。」

 「それはどんな、何に必要な物ですか?」

 「それは………………」

 沈黙、考えを巡らせる時間を空けて、諦めたように口を開く。

 「放火、やりました。」

 大人しく認める。

 「もう結構。この件については追って沙汰を下します。」

 勝った。

 苦虫を噛み潰した様な顔をして、声を押し殺す。

 損失はあった。けれどこれだけで済ませることが出来た。

 「では、この村の件については終わったようなので。

 次の件については私の方から宜しいでしょうか?」

 もう一人が見計らったように手を挙げた。

 イタバッサ。その名前は商談や噂話でよく耳にしていた。

 「貴女が貴族の令嬢の居場所を()のあちこちにリークしていた件についてまとめた報告書を読み上げるので、間違っていることがあればその都度指摘をお願いします。」

 「は?」

 は?

 「こちらで入手した情報では、最近羽振りの良い組織が幾つか確認され………………」

 音が遠くなっていく。

 代わりに心臓の音が耳元で響いて、拍動する度に凍りそうに冷たい血が全身を駆け巡る。

 寒気がする。なのに全身から冷たい汗が流れ出した。

 あの学園の連中は教師含めてどいつもこいつもロクでもない奴等ばっかりだ。

 金と権力と名声を(ハナ)から持っててそれを我が物顔で振り回して威張り散らしている。自分自体は大した価値を持たないくせに。

 だけど、中身がどれだけ無くてもガワは立派。ブランドがある。

 『●●家の人間』という箔は無いものより有るものの方が高く売れる。たとえ中身が無くてもガワにそのブランドがあれば高く売り飛ばせる。

 だから今回、良い機会だと思った。

 「邪魔者を商品にして売り飛ばせば一石二鳥、という訳ですね。」



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