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残る後始末その8-4

 小さな火種。

 用意してあった枝に火が点いて、それは徐々に大きく広がって町全体を飲む火に……

 「火の用心!」

 一人の男が大声を響かせながら火元に駆け寄り、町に一定間隔で配置してある消火器を慣れた手付きで使ってあっという間に鎮火した。

 走る、走る、町中を走り抜ける。一晩で町のあちこちに火種が撒き散らされる。だが芽は出ず、あっという間に鎮火されて終わった。




 「防災訓練(・・・・)は順調のようですね。」

 町中に急ぎで作ったポスターが貼られている。

 そこには防災のための夜回りスケジュールが書かれていた。

 ルートを見せつけて実際その通りに回ってもらい、相手に実行(・・)を躊躇わせる。それが失敗してもスケジュールに書いていない夜回り組が隙間を埋めるように回っている。

 「マニュアルは盗まれていなかった。

 であれば、悲しいことに実行犯は内部の人間の可能性が高いです。

 訓練・見回りという大義名分で皆様を二人一組で動かせば尻尾を出すと思ったのですが……内部犯は内部犯でも盗み見た内部犯でしたか……けれど一人ではありませんね。」

 犯人の正体は解っていると言えば解っていた。

 要注意人物には数人を張りつけて監視している。けれど一人だけ見当たらないのだから。けれど、酷い話ではあるが、見当たらない一人だけではこれだけのことは出来ないだろう。

 「協力者…………矢張りいますか。」

 地図に描かれた矢鱈効率的で人の流れを知った上で描かれた動線を見て言った。

 「相手は商人……のようですね。」

 その呟きを放った時の男の表情を見た者はいない。




 「『勝手に動くな』だって?

 勘違いしないでくれないかい。

 僕は君の手下じゃないんだ。」

 睨み付ける。

 それを小馬鹿にした笑顔で返す。

 「それに、君と違って僕はこの辺の土地勘がある。君が考えるよりもっとずっと上手く出来るんだ。

 そして、今とても調子が良いんだ。体は軽いし力は強くなったし眠くないし疲れない。少し前はもっと良かったんだけどね。

 どんな間抜け鈍間頓馬を想像しているのか知らないけど、僕は捕まるような間抜けじゃない。見ておくと良いさ。」

 『君には解らないだろうけど』?馬鹿だ。こんな働き者の足を引っ張る有能な邪魔者があの女(・・・)を相手にして逃げられるわけがない。

 コイツ一人がどうにかなるだけならどうでも良いが、こっちまで巻き込まれたらたまったものではない。

 『こっちまでとばっちりはゴメンだ、もう火種を返せ!』と迫る。だが……

 「あんな量、もう使い切っちゃったよ。」

 そんな訳がない。掻き集めた量の半分を渋々渡したが、まだ半分は残っているはずだ。

 「無い無い。本当本当。全部使い切っちゃった。

 もしそれが嘘だと思うなら、警備官に盗まれたって言ってみなよ。」

 それが出来ないことを知っていて、挑発的な提案をして見せた。



 それならもう、仕方ない。



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