残る後始末その8-3
淑女の特別講習の結果、時間が出来た。
淑女とシェリー=モリアーティーの両名は一室に軟禁状態。外部に出ないように三食食事を運ぶようにしておいた。
あの淑女にそれとなく聞いたところ、理由は不明だが数日ここに滞在するとのことだった。
『数日』がいつまでのことかは解らないが、ここを出る際にボヤ騒ぎの痕跡を見せては拙い。
速攻で解決する必要がある。
速攻で焼くか、それとも潜伏して待つか。
速攻で焼いて見せることができれば致命的な光景を見せつけることが出来る。
でも見つかればこっちの失態が露見する。
潜伏して去るのを待てば見つかる危険性は無くなる。
でも潜伏している間に捕まる可能性は増える。
どちらにしても危険はある。どちらにするか……。
答えは簡単、潜伏だ。あの人相手に見つからないで焼くことなんて出来ない。
これは賭けじゃない。馬鹿な真似をする必要なんてない。
絶対にやってやる!
速く早く疾く焼いて燃やして黒焦げにして泣かして壊して殺してやる!
血走った目、瞳孔は開き切って、眼球はあちこちぐるぐると動き続けている。興奮している。
血は激しく流れ、血管は浮き出て、脈打つ様が外からでも見えてしまうほどに。激情に駆られている。
骨も臓物も筋肉も血も躍動し続けている。
話を聞く前から、話を聞いている間、潜んでいる間、火を点けるまで、火が点いたその瞬間、燃えて広がる瞬間、その場から離れるために走り出す瞬間、そして走ってから今までの間ずっと燃えている。どす黒くドロドロと内側で燃え続けている
絶え間無くそんなことをすれば人の体は摩耗していく。
長時間その状態であり続ければ立てなくなってしまう。
今もずっと続き立ち続け摩耗せず止まらずに加速する。
本来耐えきれるはずの無いそれを可能にしている理由、それはシェリー=モリアーティーが施した術式だ。
胸筋を開かれて心臓の風通しを良くされた時、残った異形の肉体を分解して彼の足りない血肉骨を補った。その時の名残で彼の体の一部は異形で補強されて頑強になった。それが可能としていた。
命を救われた恩を放火という仇で返すと見るべきか。
あるいは予想していながらも自分で自分の首を絞める刺客を生かしたと言うべきか。
いや、最早考えるのは無意味だ。大きな選択の時はとうに過ぎてしまった。
選択して真っ直ぐ結果に進むか。選択して足掻いて結果を変えるか。あとはそれだけだ。
「次は、身体強化と強度強化についてです。」
「よろしくお願いいたします。」
教師と教え子はそんな中で真っ直ぐ学びにだけ向き合っていた。




