残る後始末その7-3
『死中に価値を求める』
そんな金言がある。
死中なら『活』は求めなくていい。価値を求めるのだ。たとえ苦痛と共に自分の血が流れ落ちていくとしても、肉が削がれていくとしても、骨が砕けようとも、そして死に瀕していても、そこに価値あるものを見出して最期まで喰らいつき、しがみつき、足掻き続ける、否、掴み続けるのだ。
そうでなければ自分達は生き残れない。守銭奴上等。銭ゲバ上等。金だけの賎しい者達上等。悪魔に魂を売った?提示された額が正当なものなら上等だ。
道行く人が笑っている。幸せそうな顔をしている。今を楽しんでいる。だからこっちにまで微笑んで、私の様子を見て心配までしてきた。
それが業腹だった。
噂に聞いていたこの村は廃村寸前だった。わざわざ手間を掛ける気も無かった、勝手に潰れてくれると思っていたから。
今、この景色を見て、燻っていた火種は明確に燃え上がった。
私の邪魔をされるから。だけじゃない。私がこの景色を許せないから。
壊さないと。邪魔をしないと。台無しにしないと。金奪って食い物奪って権利奪って全部私のものにしないと。
でなければ野垂れ死ぬのは私だ。
プライドはあるが、それは今質に入れておく。
そうして身軽になった自分は死地に赴き死中に価値を求めるのだ。
人流に流されて身を潜める。
姿を気配を様子を人々と馴染ませて、一体に。
絶対に私が手に入れる、全部を
村に、町に、来訪者があった。
予めその事を聞いていたし、普段通りの対応をするように言い含められていた。
無理だ。
辛うじて目視できる距離にその人はいた。
佇まいや歩き方一つで只者ではないと、ビリビリする程感じた。
漏れ出る威圧感だけで息が詰まり、手足が痺れて体が何十倍にも重くなる。
それは殺気じゃない。
お伽噺に出てくるような巨大龍と人が対峙した時に、龍は人に気が付かないことが多い。だが、人は龍に絶対に気付く、死を覚悟する。
自分を殺意も悪意も無しに無意識で一方的に踏み潰し、羽ばたきで積み上げた全てを更地に変え、全てを蹂躙する圧倒的な存在を人は恐れるのだ。
気紛れに自分達を踏み潰して遊ぶ気質を超常のそれに見出だし怖れるのだ。
自分には太刀打ち出来ない圧倒的なスケールを畏れるのだ。
龍に気付かれずに殺されるか、気付いて残虐な龍に殺されるか。
抵抗する意志は微塵も無かった。抱けなかった。
生きるための、死に対する闘争本能が吹き飛んでいた。
だから、自分が背にしている枯れ木の幹が脆くなっていて、今まさにへし折れて自分に迫っていることに気付くのに一瞬遅れた。
振り返ればそこには自分を押し潰す死がもう目の前にあった。
終わった。そう思った。
連日評価とPVを沢山頂いております。ありがとうございます。
あまりに今更ですが、もしかして、毎日同じ時間に投降した方が、宜しかったり?




