残る後始末その6-3~人外決戦終幕~
人は何故、自分に向けられる刃物や銃器、魔法を恐怖するのだろうか?
答えは簡単だ。それが自分を殺すかもしれないからだ。
人は何故、自分に向かってくる塵やそよ風、魔力に注目しないのだろうか?
その答えも簡単だ。それが取るに足らない、自分を殺しようがないものだから。
取った。
そう確信していた。
気付いている様子はない、迎撃の様子も防御の様子もない。
壁を避けて首に牙を突き立てる寸前だった。
動きが止まった。
動けなくなった。
全身。根毛一つに至るまで全てが圧倒的な力で握り潰されたように動かない。
あと少しなのに
『淑女の重威圧』
「そう簡単には届きませんよ。」
届かせない、決して。
怪物にはもう後がない。
故に後先を捨てた決死での特攻に走った。
淑女はもう以前には戻れない。
故に、前に進む。もう二度と無いように先へと進む。
怪物には本能と衝動があった。
淑女には信念と覚悟があった。
後先を捨てたものより後戻りの出来ない進むものが勝った。これはそういう話だ。
寄越せ
納得はしない。
全身が固められたように動かない。
だからなんだ?このまま餓えれば直に消える。
そうでなくとも目の前の怪物に消される。
手も足も出ない、悪足掻きも許されない、それでも最期まで…………
自壊する 自壊させる
動く内側を壊すように作り変える。
残り僅かな灯火を長く灯すためではない。むしろ何もしなければ穏やかに消えるものを一気に吹き消すような狂行。
たとえその行為が成功して、飢えを満たせたとて、そのまま消えるかもしれない。
けれど、足掻かずにはいられない。それが本能と衝動だから。
内側を壊し、作り変え、作ったものは文字通りの最期の一矢。
寸前、あと少し、届くためにそれを内より撃ち出す。
自分を内から貫きながら、飛び出す。
見えたのは灯火と舞い散る白だった。
明るく煌めくそれは目映く美しく見えた。
ああ、素晴らしい光景だ。
最期に見る景色が忌々しいものが燃えて、消えて、美しく輝く陽光の様な焔で良かった。
「見事です。」
淡々と、賞賛を贈り、介錯した。
射出された一矢は淑女に触れる寸前に、音も無く灰になって消えた。火の気は先刻まで何処にも無く、文字通り瞬く間に燃え尽きた。
本体はそれと同時に握り潰される様に小さくなり、最後には綺麗な球体にされ、斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬……………
薄く、紙のように、縦横に徹底的に切り刻まれ、そして、轟音と共に灰に変わる。
「それではこれにて、御機嫌よう。」
風に乗って灰が消える。それに礼をすると、淡々と何事も無かったかのようにその場を後にした。
いつの間にか水飛沫は乾いて痕跡も無くなっている。
何も起きていなかった。
そこでは怪物と怪物の衝突なんて起きていなかったのだ。
ボスVSボスの決戦、決着ゥゥーーーッ!!
たとえ『値』が全力を使えたとしてもこの結末は覆せませんでした。
今回、多種多様な魔法を駆使している様に見えて実は彼女、一種類しか魔法を使っていません。そして鞭も使っていません。




