残る後始末その4-8
「用済みになったな。」
「教授!」
報告を受けてシェリー君は走る。
「俺は先に行ってるっす。シェリーさんは発明家さんを呼んでから来て欲しいっす。」
傭兵は一足先に現場に向かう。
監禁され、未だ見つかっていない被害者を保護するとき、犯人の身柄を確保しているなら監禁した本人からその場所を聞き出すのが一番手っ取り早い。
嫌がらせでガセを掴まされるリスクもあるが、それを含めて被害者が見つかるまで犯人の証言は無視できない重要なものになる。
だがもう一つ、保護する方法がある。
単純にこちらで監禁場所を見つけ出してしまえば良いのだ。
「あぁ、ここから先。街道から少し外れた西の方で地下に大きな空間が見つかった。
自然に出来たものじゃない。わざわざ枯れ木を植林した痕跡があった。
偵察に潜らせてみたらビンゴ、木製の壁に阻まれた!」
合流し、台車に載せた装置をゆっくり押しながら話しているのは自称そこそこ天才。
「流石です。イタバッサ様は?」
「彼ならもう人払いに走って、既にそれを済ませている。
抵抗される可能性は無さそうだが万一を考えて……ということだった。」
自称そこそこ天才がスクラップ同然になった『家』から広い集めたもの。
それは無意味な部品や壊れて使えなくなったものだが、組み立て直せば、そこには以前使われた地下を調べるための魔道具がある。
監禁されている連中は『食糧』として生かされていると仮定。
そして、あの時、手元の食糧ではなくわざわざ町にいる子ども達を人質に使ったことから、『値』を制圧した場所を中心として町までの直線距離を半径とした円の範囲内に監禁場所は無い。
確保した食糧を保管場所まで運ぶ手間や発見されるリスクを考えると、人を捕まえた場所から極端に離れているとは考え難い。
かと言って場所が街道の目の前では捜索された時に簡単に見つかってしまう。
この辺りに町や村を除いて隠れられる建物はない。洞窟も埋まってもうない。森は枯れて隠れるには不向き。とすると、残るは地下。
この辺りの地下、深部にはあれがあるので、隠すなら浅い部分。
上記条件を満たす場所を人海戦術と自称そこそこ天才の魔道具で見つけ出したという訳だった。
『到着したっす!全員要警戒態勢!』
自称そこそこ天才の手元の魔道具から傭兵の声が聞こえた。
そうして幾つかの雑音の後。
『ちょっかいをかけてみたっすけど、抵抗や反応無し。中に人がいたら時間掛けられないんで、今から丁寧に打チ破るっす!『百手類』!』
そして、何かが砕ける音がした後……
『行方不明者を確認!救護班、急ぐっす!』
自称そこそこ天才の『衝撃厳禁』と書かれた荷物の運搬を手伝いながら次の報告に耳を傾ける。
『全員、生きてるっす!全員保護したっすよ!』
聞こえたのは勝利宣言だった。




