残る後始末その3
残る後始末その三
商人に一つ頼み事をして話し合いを終え、次へ向かう。
「あぁ、良かった。目が覚めたんだね。」
向かった先に居たのは自称そこそこ天才、ジーニアス=インベンター。
住む場所を破壊され、意気消沈……ということはなく、壊れた家を部品として新たに魔道具を発明していた。
流石は自称そこそこ天才。と言ったところだ。
「ご心配をお掛けしました。
ジーニアス様は……申し訳ありません。私の力不足でした。」
「いやいや、力不足と言うならそれはこの自称そこそこ天才のこと。
侵入を許して制御を奪われるなんてあるまじきことだ。
君のお陰で僕達はなんとか今日を迎えられた。素直にこの言葉だけは受け取って欲しい。
ありがとう。」
深々と頭を下げる。
謙遜する気満々だったシェリー君も流石にその言葉と行為に対しては折れた。
「その言葉、有難く頂戴致します。」
素直に受け取ったが、それに言葉を続ける。
「もし、ジーニアス様がいなければ、助けられなかった人が居たことでしょう。
ありがとうございます。貴方が諦めずに救おうとして下さったから、我々には今があります。」
「あぁ……その言葉をとりあえずは受け取っておこう。
もっとも……あの有様で『助けられた』だの『救えた』だのという言葉を使うのは冒涜かもしれないが。」
シェリー君がその場を去り、自称そこそこ天才は作業に戻る。
植物に絡め取られたようになった部品を取捨選択し、使えるものから新たに何かを作り、それを用いて別の部品を再構築し、徐々に徐々に別の形を創っていく。
「あ、いた。ジテーン。」
間延びした暢気な声が自称そこそこ天才に投げかけられる。
彼のことをそんな風に呼ぶのは一人だけだ。
「オーイ。その変な名前で呼ぶのは止めてくれないか?
ここに置かせて貰ってるが、君がその名で呼ぶから他の人まで私の事を『ジテン』と呼ぶようになりつつある。
というか、本名が『ジテン』だと思われているフシがある。」
「いいじゃんいいじゃん。良い名前でしょー?『ジーニアス=インベンター』って名前も良いけど、『ジテン』って名前も短くて良いよ。」
「あきれたな。人の名前を文字数で判断するのか君は……って何してるんだ?」
家の瓦礫を回収してもらって集められたガラクタの山。オーイはそこから部品を一つ摘み上げた。
「何って、手伝いに来たんだよ。ジテンがココアマシンとか美味しい料理マシンを早く作るようにってね。」
「……何を言ってるんだ君は?」
呆れた目を向けようとして、恥ずべきその行為を止めた。
「この村のためにあんな面白い家を壊して、ジテンは頑張ってくれたんだし、私に出来ること、やらないとなって……ね。」
その目は僅かな罪悪と真摯な思いに満ちていた。
「…………感謝しよう。」




