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怪物退治は終わり


 魔力が完全に尽きた。身体強化すら出来ない。

 体力も完全に尽きた。指先一本動かせない。

 視界の端、隣で茫然自失の『値』が硬直している。

 中枢()を焼き切らない場合、この術式は相手の魔力を喰らい、枯渇し、術式が消えるまで情報を産み出し続ける。

 術式の効果範囲を切断すれば辛うじて致命傷にならずに済む『C.D.E.』と違い、触れた瞬間に抵抗しようとする思考能力を奪うこの術式は発動すれば全てを無力化する。

 そして術式が情報を産み出せなくなればそれは魔力の枯渇と同義。術式が終了しても今の私の様に動けなくなる。

 殺傷力を捨てたことで徹底的に無力化と拘束に重きを置いた術式になった。

 まぁ、だからといって、安心安全人殺しが出来なくなったわけではないがね。

 火災現場や毒ガスの充満する場所で、これを使われたら。

 水中や水上、足場の不安定な高所、危険物を扱っている最中に急に茫然自失になったら。

 なによりこの無防備な状態であれば、鼻と口をつまみながら数を数えれば窒息死する。

 ナイフを首にゆっくりと突き立てれば、その痛みにも流れる血の感覚にも気付くことが出来ずに失血死する。

 事故死も自殺も他殺も思いのまま。魔力が尽きれば術式も消えるから確たる証拠も残らない。

 脳を焼くよりも便利(・・)と言えば便利(・・)になった。


 この体で術式を使った。

 私の使った術式の性質を理解することは時間の問題だ。

 ならばその時は、シェリー君はまた苦悩するだろうか?

 ない。

 シェリー君は覚悟と信念を以て私の悪意を否定し、その上で自分のものにして、自分の道を切り拓いた。

 

 また、うまく使うさ。


 悪意を越えて、己が信念を携えて望む頂へ登って行くといい。

 私は君の教授として、それを応援しよう、歓迎しよう。

 最後まで悪意に染まることなく、それが出来るのなら。






 それから暫くして、自称そこそこ天才が眠っているシェリー君とその横で固まっている『値』を見つけ、前者は保護して後者は拘束の後確保。

 駆け付けた商人に事情を話し、眠っている子ども達を送り届け、怪物に加担した4人の対処をして、シェリー君は町の建物の一室で3日眠ることになった。

 スバテラ村を脅かしていた怪物は倒された。

 忘れられ、風化した村には人がやって来るようになった。

 敵味方の死者は0。

 完全勝利。ハッピーエンド。これにて終幕。




 とはいかない。

 『怪物を退治しましたとさ。めでたしめでたし。』で終わるのはおとぎ話の中だけ。

 現実は怪物退治の後にも問題があり、それは時に怪物退治よりも厄介で面倒なこともある。

 このお話はもう少し続く。


 やることが、やることが多い!


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