混ざり合う混沌植物
スクリーンに映ったシェリー君の姿が文字通り霧散する。
腕の口から牙が飛び出し、気流を乱してバラバラにした。
『腕に口がついていて、そこから牙が生えている』という面倒な表現を使わざるを得ない。面倒この上ない。
「『心臓を貫かれて無事な肉体は手持ちに無い。』……ならそれ以外の手持ちはあるのかよ。肺や頸動脈、腎臓肝臓を潰して平気な身体なら、持ってるのか?」
「さぁ、どうだろうか?
生憎とこちらから君に教える気は全く無い。試してみるというのはどうかな?」
「ハハハハハハハ違いねぇ違いねぇ!」
体中の口から響く声。それはそれは楽しげに笑う。
文字通り口々。だが複数の口は同じ言葉を同じタイミングで口にして一つの響きを構築している。それは洗練された合唱団のようだ。
前の一撃、あらかじめ仕掛けておいた仕掛けに引っ掛かったから良かったものの、あれが胴体に直撃していたなら、こちらは絶命していた。
そう、あれは『身体強化』を使用している動きのそれだった。
だが、付け焼刃ではない。あの左右非対称で人体とは異なる構造の身体を動かしてやってのけている。
言動や口調といい、動きといい、今までの拙いそれではない。ツギハギを無理矢理動かしているそれでもない。
私の知らないもの。完成した別個体になっている。
「実に楽しそうじゃないか。良いことでもあったのかい?」
「あぁ、煩い煩いクソガキのお守りから解放されたベビーシッターの気持ちだ。
最高だぜ。あぁ、こんな最高の気持ちなら……それに相応しいご馳走を喰わないとな。」
長い舌が体中から伸び、舌なめずりをする。その目が向く先はスバテラ村。
「おやおや、大事な大事な身内ではないのですか?」
「あ?」
ここに来て表情が歪んだ。それが本当に『表情』なのかは考察が必要だが……ね。
「あそこにいる連中も、お前も、それ以外も全部、別物だよ。この世界にはもう無い。」
それを合図に腕の口から牙が射出される。銃身も何も無いそれはお世辞にも速いとは言えず、放物軌道を描いてこちらに飛んで来る。
だから、厭な予感がした。
先程の一撃の精度から予測される動きとしてはあまりにも稚拙。H.T.を展開する。
「ほらよ!」
それを肯定するようにのろまな牙の後ろから頭蓋骨サイズの岩を幾つも投げつける。
岩が牙を後ろから押し出す形になって……爆ぜた。
目を焼く閃光と衝撃が二人の間に散り、黒煙が充満した。
「魔法の扱いも巧くなったものですね。後学のためにどちらで教わったか教えて頂けますか?」
H.T.一枚での防御を泥の壁に変えて良かった。
目の前に作った泥の壁を目の前で二つに割って泥の壁表面を観察する。
そこには砕けた岩と鋭利な牙の破片が埋まっていた。
ブックマークありがとうございます。
この生き物、口がいくつもあるせいで台詞が面倒くさい!




